第20話 汗と涙
……さて『
のんびりと、野華さんが
「どうした?」
「……私……ごめんなさい」
佐奈ちゃんが立ち上がり、俺たちに頭を下げて恐縮している!
ど……どしたの!?
野華さんと落合さんが、すかさず佐奈ちゃんに駆け寄り、背中や腕を
……元『斬鬼軍』の捕虜だった、3頭身キャラ化している、元『バウンティー・アーミー』の5人も、おままごとセットのような、小さなカップをミニチュアテーブルに置いて、心配そうに、机の上から佐奈ちゃんを見上げている。
……それとは対照的に、
俺はユイに「……こんな時は、朔也くんが率先してハンカチを差し出して、佐奈ちゃんを慰めるものなんだけど……」と言ったが、やはり
……佐奈ちゃんが、しゃくり上げながら、話し始めた。
「……私、ずーっと『努力』や『根性』なんて、ダサいし、カッコ悪い……と思っていました」
それ、なんとなく解る。
親が観ていた『熱血ドラマ』? なんて、こっちが恥ずかしくなるし、
やっぱり『俺TUEEE』最強だぜ! 方向転換しよっかな ←独り言
「……そんな時、コマイ先生の作品に出会って、主人公の『スズキ ノリコ』を羨ましく思いました。 ……私も、自分の妄想彼氏と恋人になりたい……って、心から思っていたんです」
そう言って佐奈ちゃんは、出来たてほやほやの『朔也くん』を、眩しそうに見た。
……うんうん、中学生くらいの『夢見る少女』らしくて結構結構!
「……でも今回、平総司令やユイさん、コマイ先生や
……暫くして、佐奈ちゃんが続けた。
「……本当に……私の、しかも『妄想』を叶えてくれる為に、皆さんが全力で戦って下さる姿を見て……私、自分の間違いに気付いたんです!」
「間違い?」とユイが聴き返すと……
「……はい。 皆さんおひとりおひとりが、次々に訪れる困難を、流れる汗や涙を拭きもせず、文字通り『全力』でこなしている姿……しかも、それはご自分の為じゃなく、昨日今日、初めて合ったばかりの、こんな
……そう言う佐奈ちゃんも、流れる涙を拭こうとしない。
若い涙は、宝石以上に美しく
「あ〜〜〜〜〜〜っ!」
な、何だあ!?
ユイがこんな大声を上げたのを初めて聞いた!
「どうした!?」
「や、やぬし! 見てみよ!」……ユイはそう言って、朔也くんを指差した。
その指の先には、な、なんと……
『涙』だ! 朔也くんが、佐奈ちゃんに負けずとも劣らない、綺麗な涙を両の眼から流している!
「あたしは『奇蹟』って言葉は好きではないのだが……これこそ『奇蹟』だ!」
……確かに、
……佐奈ちゃんが立ち上がり、朔也くんの涙を拭きながら……
「……私、朔也くんとは、ただのクラスメイトのままでいたいんです。 ……せっかく皆さんが全身全霊を込めて創って下さった朔也くんを、何の努力も無しにを手に入れるなんて、今の私には早すぎるから……」
……佐奈ちゃんの言葉に、全員が感動した。
やはり佐奈ちゃんは、ただのお嬢ちゃんでは無い。 しいて言うなら、矢主家の皆さんが、しっかりした教育をしているんだろう。
佐奈ちゃんは自分の涙を拭き、朔也くんの顔に頬を寄せて、スマホで自撮りした。 二人共、いい笑顔をしている!
写真を共有させて貰ったが、とても素敵なセルフィーだ! このまま雑誌の表紙になるよ!
「じゃあ皆さん! 次は皆で記念撮影しましょう!」
佐奈ちゃんの呼びかけで、皆が顔を寄せ合った。
元バウンティ・アーミーの面々も、嬉しそうに皆の肩に乗った。
……こんなに清々しい気持ちの記念撮影は久しぶりな気がする。
「じゃあ、撮りま〜す! せ〜の!」
『パシャリ』
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