第11話 傍観

 ……お店の窓から外を見ると、さっきまで所狭しと並んでいた『空中戦艦』が姿を消し、代わりに、白い薄衣を身に着けた連中が、雲のようなフワフワした乗り物で移動しながら、手と手を繋いで楽しそうに『お遊戯』(?)を踊っているではないか! 『戦艦』が発する、けたたましい音は消え、代わりに小鳥のさえずりのような心地良い音楽がBGMのように流れている。


 さっき野華さんが言っていたが、恐らく『空中戦艦』から邪気を取り除くと、こんな純白の『綿菓子』のようになるんだろう。


 ……窓越しにそれを見ていた王牙が通信機を床に叩きつけ『サン・クリスタ』こと野華さんを、文字通り鬼の様な形相で睨み付けた。 ……床に転がった通信機も、すぐに消滅した。 お店の床にキズを付けたから『武器認定』されたのだろう。 ……その後、通信機は、可愛く『デコった携帯電話』に姿を変えて戻って来た。 ふむ『映え』てる! ←時代遅れ


 野華さんは「……当店の近くにいらしたお仲間は『銀河の清き流れ』に移動され、生まれ変わったようですね。 王牙さんも行かれます? それとも……何かお召し上がりになりますか?」……と、いつもと変わらない、穏やかな表情で言った。


 ……暫く野華さんを睨んでいた王牙は、諦めたのか近く椅子にどっかりと腰を下ろし……「酒だ! ダモクロス産の強い酒をくれ!」……と言って、テーブルの上で足を組んだ。


 ……野華さんが、俺ですら初めて見る悲しそうな表情で……


「……申し訳御座いません。 当店はお酒のお取り扱いはありません……」と言って深く頭を下げた。


 ……王牙が次にどのような行動を取るのか興味があり、俺たち傍観者達は、警戒しつつ固唾を飲んで見守ったが、メニューに手を伸ばした王牙が注文したのは、人数分の『アイスココア』だった。


 落合さんが「王牙って、ああ見えて甘党で猫舌なんです」……と言って苦笑いした。


 ……俺達が見守る中、ココアを一息に飲み干した王牙は、お行儀悪く足を机に乗せたまま高いびきをかいて眠ってしまった。


 それを見たユイがにわかに立ち上がり、王牙に歩み寄った!


 ……!


 や! ヤバい! この場所で争いを起こすのは非常にヤバい!


 ……引き止めようと思ったが間に合わなかった!


 ユイが王牙に向って「おい! 貴様!」と怒鳴りつけた。


 王牙のイビキが止まり、片目を開けてユイを見た。 


 ……緊張が走る!


 「この『コオリ』を残すとは! 勿体ないぞ!」


 ……その場に居た全員が、昔のコントのようにズッコケたのは言うまでもない。

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