第12章『絶対的非武装区域』

第1話 聴取

 さてさて……ずは、佐奈ちゃんへの尋問? 聴取? って事になるのかな?


 ……とは言っても、こんな怪物衛鬼兵ばかりがウヨウヨしているような場所じゃ、佐奈ちゃんものんびり話が出来ないだろう。


 俺は再び『司令徽章』で『フォーメーション “コード・絶対防衛A・D”』を発動した。


 え? 野華ひろかさんに会いたいからだろう……って!?


 違う違う! あくまでも佐奈ちゃんの為でんがな〜。 公私混同はしておりまへんで〜 ……嫌やわあ ←ハイテンション!


 ……野華さんは、いつもの飛びっ切り笑顔で、またまた俺達を迎えてくれた。 ……流石さすがは、アティロムの次期プロモーションの主役だけの事はある、良〜い笑顔だぜぇ。←セルフパロディ


 今回は、俺達の目の前で可愛らしい『コンロード』……じゃ無かった『焜炉コンロ』(本当に誤変換しました)と『焙烙ほうろく』を使って、茶葉をサラサラとかき混ぜて、なんと『ほうじ茶』を作ってくれている。


 ……以前、野華さんは『無趣味』と言っていたが、とんでもない! ……いや……『趣味』なんて言ったら申し訳ないくらいの、お料理の腕前だ。


 茶葉をる『チリチリ』という高尚こうしょうな音と、甘いようなほろ苦いようなかおりを含んで揺蕩たゆたう白煙が、優しく部屋中に拡がった。


 俺は、高価たかそうなお茶器に入れられた由緒正しきほうじ茶と、綺麗な果実の形をした和菓子。 佐奈ちゃんには、ミルクたっぷりのほうじ茶ラテと、可愛らしいイチゴのケーキ。 ユイには、濃い目に煮出したほうじ茶を、わざわざアイスピックを使って砕いたクラッシュアイスのみを入れて、キンキンに冷やした『アイスほうじ茶』と、ホカホカのクロワッサン鯛焼きを用意してくれた。 ……ユイは、鯛焼きは初対面なので、その形の面白さからか、様々な方角から観察したり、匂いを嗅いだりしている。 ……そして『縁日』で見た『型抜き』宜しく、周りの部分だけをフォークでけずって食べ始め『鯛』の部分が綺麗に残ったらニコニコして、皆に自慢している。 ……こいつ見てると、ホント、飽きないな。


 ……のんびりとティータイムを過ごした後、いよいよ本題に突入だ。


 俺が「……で、佐奈ちゃんが大好きな『利根』くんって、どんな男の子なんだい?」と切り出した……が、佐奈ちゃんは、耳を真っ赤にして、またうつむいてしまった。 

 

 ……ユイが、余った氷をガリガリと豪快にかじる音だけが野華さんの部屋に響く。 


 ……俺……何か悪い事言った?


 ……野華さんが俺にウィンクしてくれた。 


 ……そして………


「佐奈ちゃん、盆人はちひとさんの『衛鬼兵団』の危機を救ってくれて、本当にありがとう。 心から感謝致します」……と、紗奈ちゃんに向かって、深く頭を下げてくれた。 紗奈ちゃんは恐縮して、野華さんと同じ角度で頭を下げた。


 ……顔を上げた野華さんが「私から紗奈ちゃんに、お礼があるんだけど……受け取ってくれる?」……と聴いた。


「そんな……こんなわたしなんかに……」と、佐奈ちゃんは益々小さくなっている。


 ……野華さんが部屋ドアを開け、誰かに手招きした。


 ……すると、小柄な女性が、恥じらいながら、ちょこちょこと入って来た。

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