第2話 出頭

 ……例の地鳴りがして、地面がり上がる。


「……これは、衛鬼兵団の議事堂が出現する時の……恒例の儀式? みたいなものだから心配らないよ」……と紗奈ちゃんの手を握った。


 ……紗奈ちゃんの反対の手は、ユイが握ってくれている。


 紗奈ちゃんは、気丈にも、目を見開き、しっかりと立っている。 ……怖くてうずくまり、頭を抱えていた俺とは対象的だ。 良きかな良きかな!


「議事堂には、様々な大きさの参謀がいる。 ……怖そうな顔の奴も居るけど、みんな良い奴だから安心してね」……と言うと、しっかりした口調で「はい!」……と、頼もしい返事が帰って来た。


 ……落合さんの小説のファンなだけあって、きもが座っている。 ……あとは『どうしても刀根とね朔也さくや君と仲良くなりたい』……という『願いの強さ』の現れだろうな。


「これより……軍議を凝らす」


 ……参謀長の、例の低音が議場に響いた。 以前と比べると抑え気味になったとは言え、初めて聞くと、やはり恐ろしいんだろう……紗奈ちゃんの手に力がこもった。


 ……ユイが「やぬし……安心せい。 こいつらは貴様を喰ったりはせん」……と言って、いつもの不敵な笑みを見せた。


 その笑顔を見て安心したのか、紗奈ちゃんの強張こわばった表情が緩んだ。


 ユイ、GJ!←古!


 ……俺は、早速挙手した。


「総司令閣下」


「……今回は『斬鬼軍』が開発した、例の『対衛鬼兵団兵器』の対抗策を発見したと言う『矢主やぬし紗奈』さんに出頭して頂きました!」


 議事堂がざわめいた。 ……史上最強の兵団の技術力をもってしても方策が見付からなかったのに、民間人の、しかも中3の『義務教育就学児童』が発見したとは、にわかに信じられないようだった。


「矢主 紗奈殿」


「は、はい!」


……勇気をふるい起こして、この場に来てくれた紗奈ちゃん……衛鬼兵団の為、そして、何より君自身の為に、ガンバレ!


「……初め……まして……矢主 紗奈と申します」……と言って、ペコリと一礼した。 ……さすがは矢主財閥の一人娘……礼儀正しい。


 参謀達が答礼し、全員の視線が紗奈ちゃんに注がれた。


 うっ! 相変わらず……圧がすっげぇ!


「……ご存知の方もおられると思いますが……私は……一度『斬鬼軍』に操られました」


 情報参謀が、軽く頷いた。


「気が付くと……私は、たいら総司令の奥様の部屋にいました」


 おい〜、紗奈ちゃん〜 (〃∇〃) 『奥様』なんて……気が早いよお〜


「……そのあと、自分の部屋に転送されたんですが、その時に気付いた事があるんです」


 紗奈ちゃんが、自分の三編みをつまみ、参謀達に見せながら


『……この編み上げ方……わたしの編み方と、ホンの少し違うんです!』


 ……えっ?

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