第10章 絶対防衛圏

第1話 転戦

「……で、その『うってつけの人類』と言うのは、何処どこ何方どなたです?」


 ……と、俺が情報参謀に聴くと……


「総司令の『住宅管理者』の『子孫』です」


『住宅管理者』? あ、大家さんか!


  大家さんの『子孫』……そう言えば、以前……


『……「可愛らしい妹さんだな。 オレの孫も可愛いぞ! 今度遊んでやってくれ」 ……と言い残し、上機嫌で去って行った』(第2章『願望』 第2話『ユイ』をご参照下さい。)


 ……って事があったっけ……。 大家さんのお孫さんの事かな?


「『矢主 建造』氏の子息の娘に当たる『矢主 佐奈』氏です」


 ……!


 やっぱり! ……俺は鷹音ようおんさん……いや、野華ひろかさんの事で精一杯だったから、すっかり忘れてたけど、遊んで……って言われてたんだよな。


「その子も、何か『懸案』があるんですか?」


「はい……」


 情報参謀が言うには、大家さんの孫『佐奈』ちゃんは、中学三年生。 あと半年で卒業になるのだが、実は好きな男の子がいるらしい。 ……その男の子は、頭脳明晰、スポーツ万能、そして美男子……だそうだ。


 佐奈ちゃんは地味で目立たない女の子で、すっかり自信を無くしており、受験勉強にも身が入らず、毎日、ネット小説を読んで、自分の世界に入ってしまっている……との事。


 そんな時に、佐奈ちゃんは、何と! 落合さんの『衛鬼兵団えいきへいだん』……じゃ無かった、『流浪の軍隊』が主役の『恋を叶える為の戦争』ストーリーを読み、自分の為に闘ってくれる『無敵の軍隊』に夢を求めているらしいのだ!


 ……そうかあ!


 ……世界は広いようで狭いなあ……。

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