第13話 最後通牒

 俺とユイは『司令徽章』で『陸戦要塞』の屋上に通じる階段に転送テレポートした。


 階段を上がり、屋上に戻るが、鷹音ようおんさんの姿が……ない!


 手分けして探すが、やはり何処にもいない。


 ユイが俺の胸の『司令徽章』に、「鷹音ようおんの現在地を示せ!」……と言うと、このビル要塞の近くの道にいる事が判明した。


 急いで階段を駆け降り、鷹音さんの居場所に向かった。



鷹音ようおんさぁ〜ん!」


鷹音ようお〜ん


 ……ふたりで呼ぶと、鷹音ようおんさんが振り返り、満面の笑みで駆け寄って来た。


たいらさん! ……良かった! これ……」


 ……と言って、俺のスマホを渡してくれた。 さっき、慌てて落としちゃったんだな。


 「壊れて無ければ……良いですが……」


 鷹音さんがスマホを覗き込み、スッと目をらした。


「……大丈夫です! 頑丈なカバー買っておいて良かった」


 ……と、俺が笑顔で言うと、鷹音ようおんさんは下を向き、耳を真っ赤にしながら……


「申し訳ありません……覗く気は全く無かったのですが……目に入っちゃって……」


 ……目に……入る……?


 ……!


 やばっ! 待ち受け画面!


 ……そこには、鷹音ようおんさんが旅行に行った時に自撮りしてくれた笑顔の写真が、画面いっぱいに映っていた!


「あ〜〜! ご、ごめんなさい! 許可も得ず!」


 俺は慌てて、必死に頭を下げた!


 鷹音ようおんさんは、下を向いたままだ……。


 ……ユイが、俺の腕を肘で突き、笑顔で軽く手を振って、背中を向けて走って行った。



 空には、だ花火が俺たちを断続的に照らしている!


 今しかチャンスは無い!




 ……「鷹音ようおんさん」


「はい?」


 ……鷹音ようおんさんが顔を上げ、俺と目を合わせた。




 俺は、深々と頭を下げ、こう言った。


「俺と、付き合って下さい!」


 ……前から、ずっと追い続けていた鷹音ようおんさんに、やっと想いを告げる事が出来た。


 ……しかし、顔を上げるのが……怖い!



 ……俺の左腕を誰かが掴んだ。 目を向けると……



 …………鷹音ようおんさんが、腕を組んでくれている!


「平さん……おかしな事、おっしゃらないで下さい……」


 ……え?




「私達……もう付き合ってるじゃないですか!」


 鷹音ようおんさんの顔が、霞み出し、良く見えない……。


 俺の目から、涙が噴き出していたから……だ!


 鷹音ようおんさんは、もう片方の手でハンカチを出して、俺の涙を拭きながら……


「あれ? ユイちゃんは?」


「あ……先に帰りました!」



 ……鷹音ようおんさんは残念そうな顔をしていたが思い直したように


「じゃあ、二人でさっきの屋上に戻りましょ! 折角の花火が終わっちゃいますよ!」


……と、組んだ腕を離し、手を握って走り出した。


 俺も手を握り返し、一緒に屋上に向って走った。

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