第12話 閃光

 ……俺は、この危機に瀕して、あの『悪夢』を思い出していた。


 瓦礫に押し潰され、焔に巻き込まれる『悪夢』……。


 ……実はヒキガエルの化け物みたいな『食いしん坊』の兵士が、俺を起こそうとして、トラックみたいな人差し指でゆらし、灼熱の息を吐きかけていたのだが……。


 俺は気を失っていたので会った事は無い、妙に気になる衛鬼兵えいきへい……そいつの存在を思い出したのだ!


 『言霊の奇跡』が起こる事を信じて、おれは一息に、こう叫んだ!


 「『めし』だ〜〜〜!」



 瞬時に目の前に、巨大な『ヒキガエル』みたいな怪獣が現れて……


 「総司令……めし……喰わしてくれるのけ?」……と、呑気な声で言った。




 俺は、ユイ仕込みの不敵な笑顔で


 「うしろから来るぞ! 残さず喰えよ!」……と叫んだ!



 弾 着!

 

 閃光が走り、爆発音が……


 ……すこーし……した。


 

 ……ヒキガエル……食いしん坊の兵士が満足そうに……


「珍しい喰いもんだったけど、美味かったど〜。 ありがとさん」


 ……とだけ言って、のんびりと帰って行った……。



 ……俺が、抱き締めていた腕をユイから離すと……


 「あいつ、昇格させないとな……」


 ……とポツンと言って、涙を手で拭きながら、いつもの不敵な笑顔を空に向けた。


 ……俺も空を見上げて……


「あの『悪夢』と思っていた夢は、もしかしたら、この時の為にあったのかも知れないな……」と、小声で呟いた。


 あっ! 流れ星!


鷹音ようおんさんと恋人になれますように……』


 ……この願い……届くかな……?

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