第10話 光点

 このままでは、ユイの肉体が崩壊する!


「作戦参謀! 『そよかぜtender breeze』は呼べないんですか?」


無理ネガティブだ。 今は『炸薬変換作業』と『打ち上げ作業』で手一杯だ」


「そんなの、どうでも良い! 『花火作戦』は中止して下さい!」と、俺が叫ぶが……


「それも無理ネガティブだ。 今、中止すると、先程さきほどのビルの直近で……残りの炸薬が誘爆を起す!」


……そんな……。


 ユイが「これが最善の策だ。 あたしがミサイルを『細胞配列変換』すれば、事後処理は『そよかぜtender breeze』に任せてある。 兄は何も心配しなくて良い!」



 ……!


 遠くに光点がえ、徐々に大きくなって来た!


 空自の長距離空対空ミサイル『メテオ』だ!



「来たぞ! ミサイルの目標は、恐らく兄の『司令徽章』だ! ……弾着前に、

確実に……とす!」


 ……そしてユイは、俺に目を向け、泣きながらも笑顔を浮かべ……


「兄、世話になった。 『おにぎり』美味うまかったぞ」


と言って、厳しい表情で再び夜空を見上げた。



 ユイの手の平がぼんやりと光り、その光がミサイルの光点の大きさと比例するかのように、輝きを増している……!




 ……そんな……これで、本当に……ユイと……お別れになってしまうのか……?



 俺の頭に、ユイと過ごした日々がフラッシュバックした。



 美味そうに、笑顔でおにぎりをパクつく姿……


 凛々しい軍服姿……


 シャワーが済んで「あづい〜」と言って駄々をこねる姿……


 初夏の装いで、俺の目の前でくるりと回ってポーズを決めた姿……


 桃太郎さんのようだと俺が笑った時の、ねた顔……


 長瀬達と笑い合った時の笑顔……


 鷹音ようおんさんのオムライスを眺めていた時の嬉しそうな顔……


 浴衣姿で「おにぎりが無い」と言った時の泣き顔……


 鷹音ようおんさんの膝の上で、ぬいぐるみを抱いていた寝顔……


 その『すべてが……消える』なんて……


「ユ イ ー ッ!」

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