第9話 転送

「お〜っ! と、っと!」


 階段を急いで駆け降りている途中で転送テレポートしたので、足を強く踏み締めすぎ、危うく転びそうになったが……堪えた!


 かなりうしろの方から花火の音が響いている。 ここは……衛鬼兵おれたちの陸戦要塞とは別のビルの屋上だ。


 ユイは、その屋上のへりで、両方の手の平を夜空に向けて立っていた。


 俺は、ユイを抱き締めるようにして引き倒した。


「兄! 何故なにゆえここにいる? 離せ!」


 そう言うユイの頬は涙でびしょ濡れだ。


「お前、何をする気だ?」


「空対空ミサイルに、あたしの『細胞配列変換能力』をすべてて、ミサイルを『ハナビ』に変換させる!」


 ……そんな事出来るのか?


『司令徽章』から、3Dの作戦参謀が映し出された。


「閣下! 前総司令が『細胞配列変換能力』を全て使い果たすと、細胞結合を維持出来ず、肉体が……崩壊する!」


「馬鹿者! 余計な事を申すな!」ユイが作戦参謀を一喝した。



「馬鹿はお前だ! そんな無茶な作戦は却下だ! 何か別の方法を考えろ!」と、俺がユイを一喝した。



「駄目だ! 離せ!」


 ユイが、俺を振り払ってさっきのへりに昇り、また手の平を夜空に向けた!

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