第8話 工作

「ユイ? どうした?」


『兄……齟齬が生じた!』


 ……齟齬? 


『斬鬼軍の残党に不穏な動きがあったので尋問したら、とんでもない事態が判明した!』


 ユイの話では、衛鬼兵団えいきへいだん特殊任務遂行部隊、コードネーム『そよかぜtender breeze』が空自のミサイル6基中5基を接収した時点で、斬鬼軍の生き残りが、衛鬼兵団の専用通信回線にジャミングを仕掛けてミサイルの残数を狂わせたそうなのだ。


 ……その工作により、ミサイル1基がそのままの状態で次元断層に取り残されており、奴らの手で方向を変えられたミサイルが、間もなく俺たちに向けて発射される…というのだ!


「じ、じゃあ、このままだと、俺たちはミサイルの標的になる……って事か?」


……と、鷹音ようおんさんに聞こえないように、小声で言った。



「そうだ。 だが今回は完全に我が軍の重大インシデントだ。 我らの責任にいて処理するゆえ、兄らは安心して『ハナビ』を楽しめ」……と言って電話が切れた。


 ……ユイの声は、明らかにいつもと違う。


 以前ユイが、俺と鷹音ようおんさんが結ばれたら、別れるのか? ……と聴いてきた時と同じ響きだった……。


 俺は急いで階段を降り『司令徽章』にユイの場所に転送テレポートするよう依願した。

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