第4話 陸戦要塞

「ふ〜っ! お腹いっぱいです〜」……鷹音ようおんさんが笑顔を向けて下さった。


「俺もです! 普段バナナやクッキーの串かつなんて絶対食べないから新鮮でした〜」


「私、たいらさんが『かつ』って仰っしゃたから、お肉だけだと思ってました。 トマトとか紅生姜の『かつ』もあるなんて!」


 ……今回の『串かつデート』も大成功と言えるだろう。


 帰りの駅に向かうと……


『ピンポンポンポーン』


 ……チャイムだ! 来た〜!


 俺と鷹音ようおんさんにしか聴こえないアナウンスが入る!


『本日8時より予定しております町内会主催の花火大会は、予定通り行われます』


 ほお! ↑ ユイ、ナレーションうまいじゃん。


 鷹音ようおんさんの表情が、ぱぁ〜っと明るくなった。



たいらさん、たいらさん!」


 鷹音ようおんさんが、俺の腕をポンポンっと叩く。 ……あ、もっと……♡


「はい?」


「実は、私……花火、大好きなんです! 一緒に見て行って頂けませんか?」 


「あ、今、アナウンスしてましたね! 良いですよ! 行きましょう!」


 ……俺は、情報参謀と偽造した『花火大会のお知らせ』……というWebページをスマホに映した。


「すぐそこのビルが絶景ポイントみたいですよ」


 ……そのビルは、今この時間、俺が『最後通牒』を鷹音ようおんさんに伝える為だけに衛鬼兵団えいきへいだん工兵部隊が建造した『陸戦要塞』だ。


 不自然にならないように、3D映像で、人類が動き回っているこだわりようだ。


 エスカレーターで屋上に向かいつつ、俺と鷹音さんは『花火』の話に『花』が咲いていた。




 ……この時の俺は『あんな事件』が起きるなんて、想像していなかった……。

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