第8章『総力戦』

第1話 情報伝達

 ……俺が腕を組んで考えていると、ユイが後から……俺にそっと近づき……


 お世辞にも大きいとは言えない胸を俺の背中に……ピッタリと付け……優しく手を回して……


 そのまま……


 スリーパーホールドッ!

 

 やめろぉ! ぐ、ぐるじい! ぐるじいがら!


「前から言っておろう! 懸案があるなら、申せ!」


 わ! わがっだ! 言うよ!! ギブギブギブ!!!


 ユイが、俺の横に戻った。


 今回は、マジ、やばかった〜! ……何か、川の向こう岸で、死んだ婆ちゃんが手を振ってるまぼろしが見えてたぜ……。




 鷹音さんに花火を見ながら告白したいが、そうするには、人が多過ぎると思う……との懸案をユイに伝えた。


「……この前の『ナツマツリ』もそうだったが、兄らは、良くつどうよな」


「俺たちは、元々『楽しい事は皆で共有したい』……と思う生き物だからね」


「……確かに『さばげ』は、一人より長瀬大佐や青木少将、藤岡大尉らとやるほうが、何十倍も高揚するものな。 ……その気持ちは、あたしにも理解出来るぞ」


 ……藤岡さんは、既に『大尉』だったのか。



 ユイも腕を組んで考え始めた。



 ……今がチャ〜ンス! 逆にスリーパーホールドをかけてやれ! ……などというだいそれた考えは、その時の俺には皆無だった。←蛇足



「……ところで兄は、我等との『言語』による情報伝達は、どのようにしておこなわれているか知っておるか?」



 ……!?


 今迄、考えた事が無かった。


 そう言えば、こいつ等の言葉は最初から日本語で聴こえていたな……。 単なるご都合主義かと思っていた。



「我等は、『言語』や『音』による情報伝達を行う際には、中耳ちゅうじにある鼓膜…と言う器官に、厚さおよそ200ピコメートルの振動式翻訳装置を装着し……」


 ……!


「……その翻訳装置を介して『会話』しているのだ。」


 いつの間にそんな事したんだ? …などと聴くのは、野暮な話だ。


 何せ、放っていても『視点』総てをハッキングしてしまうような連中だから……ね。



「それを応用すれば、特定の個人のみに、情報を伝達する事も可能だ」


 ……伝達……?

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