第7話 悪夢

 ……その日の夜……


 てっきり、憧れの鷹音ようおんさんとデートする夢でも見られると思って、ワクワクしながら布団にくるまった俺なのだが……


 真夜中に悪夢で目が覚めた。 酷い寝汗だ……。


 ユイは呑気に高いびきをかいている。


 俺は、こっそり起き上がり、下着を着替えながら思い返した。


 ……最近、何故なぜか夢でうなされる事が多くなった。


 そのシチュエーションは、毎回同じだ……。



********************


 突如、轟音と共に、大地が割れる。


 アパートの天井が崩れ落ちたのか、背中に激痛が走り、押し潰されてしまう!


 いくら藻搔もがいても微動だに出来ない。


 追い打ちをかけるように、肌を焦がす熱風が俺の身体に容赦なく吹きつける。


 激痛と、猛烈な熱に耐えながら、俺はある事を思い出す。


『火災旋風』


 ……科学が発達した現在に於いても、未だに、そのメカニズムが解明されていない現象の一つだ。


 震災や空襲で、大火災が発生すると、この現象が起きると言う。


 この災厄により、おびただしい数の尊い命が奪われてしまった。


 火災旋風の恐怖から逃れ、奇跡的に一命を取り留めた、ある老人は、こう証言している。


「巨大なほのおの龍が、人々をみ込んで、天に昇っていった」


 ……と。


 これは、迫りくる『死』の恐怖が見せたまぼろしではない。


 火災旋風の正体は『巨大な焔の竜巻』なのだ。




 俺には関係無い事だ……と、ずっと高をくくっていたのに……まさか、こんな事が起きるなんて……。


 人生って、こんな唐突に終わりを迎えるものなんだな。



 ……そんなことを考えていると、それは、出し抜けに起こった。


 圧迫されていた背中が軽くなったのだ。



 ……た、助かった!?


********************


 ……と、必ずここで目が覚める。




 まさか、俺がこんなに幸せになれる訳が無いから、目に見えない何かが邪魔しているのか?


 何か恐ろしい事の前触れで無ければ良い……と思いつつ、再び横になった……。



*********************



 ……この悪夢の原因は、後日、判明する事となる。

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