第6話 『拳《けん》』
……夢見心地のまま、電車に乗った。
車内から、駅前駐車場が見えて、
……別れ際に
「腑に落ちんようだな……」ユイが口を開いた。
「俺は、平凡な人間だし、人が言う
「
ユイが、『司令徽章』に何かを呟いた。
「通信参謀に、兄と出会ってからの我が兵団の戦歴を『すまーとふぉん』に送らせた。
『浮遊玩具帰送戦』
『本次元潜伏用衣服転送』
『航時ニヨル学区変更戦』
『短冊情報複写細胞培養及ビ解読戦』
『地球外殻反転法ヲ
……懐かしい文字が並んでいる。
「なっ?
……ま、まあ、狭義ではそういう事になるかも……な。
最寄り駅に着いた。
時間的に、かなり遅くなったので、人通りは無い。 ……まるで世界が二人きりになってしまったような錯覚を覚えながらアパートまで並んで歩く。
ユイが続けた。
「
確かに、初めて聴いた時は、背筋が寒くなった。 ……元々こいつらは『史上最強の兵団』だって事を思い出した瞬間だったっけ。
ユイは「我らは誇り高き
……と言った
俺が不思議に思っていると……ユイが……
……俺に抱きついた。
……しばらく、時がそのまま流れた。 ユイの鼓動が早くなるのを感じる。
ユイは、出会った頃と全く変わらない、澄み切った瞳で、俺を見詰めた。
……その瞳は、一切の澱みが無い、純粋な涙を
潤んだ瞳は街灯を映し、それはまるで穏やかな海の夜景のように、優しく輝いていた。
そして、俺の肩に手を回し、つま先立ちになり……その透き通る様な
俺は、心配になって、ユイの手を振り
その途端、ユイの表情が変わった。いつもの不敵な笑みを浮かべ…
「……これで理解したであろう! 兄が『誠実』と言われた
こいつ〜、
人差し指で、ユイのひたいを突っついた。
ユイは舌をペロッと出して「てへっ」……と笑う……
……かと思ったが、
油断していた……流石は司令官に昇り詰めただけの事はある。もう、
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