第4話 告白

 ……多分、只の偶然だとは思う。


 現に、落合さんは、思い出し、考えながらはなしていた。


 そもそも、あの衛鬼兵団えいきへいだんが、自らの存在を俺以外の人間に感付かんづかれるはずが無い。


 ……そう考えたら、少し安心した。 ……だが念の為に、あとで情報参謀に確認してみよう……。


「そう言えば、たいらさんのお話をお聴きして無かったですね」


 ドキッ! よ、鷹音ようおんさんからの奇襲攻撃! 


 舌と胃袋に記憶させようと、必要以上に味わっていた、鷹音ようおんさん手作りのチーズスフレを慌てて飲み込んでしまった。


 いやあ、失念! 自分の事を聴かれるとは、全く思っていなかった……。


 俺は、困った事に誇れる特技も趣味も無い。


 強いて言えば、安くて美味い店を色々知ってるくらい……か……。 


 あのゴー☆ジャスなお食事を戴いたあとに、『赤ちょうちんの一杯いっぱい飲み屋』なんて口に出すのもおこがましい……とは思ったものの……


「そうですね……。安くて美味い店を探すくらい……ですかね……」……と、正直に言った。 これは先日、長瀬(当時上等兵)が鷹音ようおんさんを夏祭りに誘う時に、正直に伝えた事を踏襲した形だ。


 落合さんと藤岡さんは「たいらさんは、本当に食べるのがお好きなんですね〜」……と、笑った。


 が!


 鷹音ようおんさんは、笑いながらも……


「羨ましいです〜! テレビで観たことがある『牛丼屋さん』とか、『焼き鳥屋さん』……も、行かれた事がお有りですか?」


 ……と、興味津々の表情で聴いてきた。


 うわっ! 瞳……綺麗! ……ユイ以外に、こんなに綺麗な瞳を見た事が無い。


「『利き牛丼』と『利き焼き鳥』で、たいらさんの右に出る人は、居ませんよ」 ……と、長瀬がM61低高度防空用機関砲よろしく、的確に援護射撃をしてくれた!


 長瀬! 出来でかした! 褒美として今日から『大佐』を名乗るがい!


「すご〜い! 私、前から行ってみたかったんです! 今度連れて行って下さい!」


 ……これ……夢?

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