第2話 一刀両断

「大変、お待たせ致しました。 つたない素人料理で恐縮ですが、お楽しみ頂ければ幸いです」 


 ……!


 ……いよいよ、真打ち登場! 左腕にトーションをかけた鷹音ようおんさんがキッチンからお出ましになり、頭を下げた。


 そんなそんな! どうかこうべをお上げ下され!


 あの鷹音ようおんさんが、俺を覗き込み、オーバーにかしこまって……


 「、いかが致しましょう? 2つとも開いちゃいますか?」


 ……と、メイドさんよろしくおっしゃった。


 「是非、お願い致します。 あ〜! その前に、動画撮影させて頂いて良いですか?」


 「恥ずかしいですが、どうぞ」 


 出たぁ〜〜!


 伝家の宝刀! エクスカリバー! 戦艦大和の九四式46サンチ三連装主砲! ……あとは……水戸黄門の印籠いんろう……! 鷹音ようおんさんの恥じらいフェイスが炸裂! この表情にあらがえる男性が存在するだろうか? いや、居る訳がない。それは、明々白々だ!



「オープン」の掛け声で、鷹音ようおんさんと落合さんが、同時に『開封』してくれた。 ……羽毛布団のようなフワッフワの半熟卵がバターライスを優しく包み込み、あったかい湯気が、ほわぁ……と、2本立ち昇った


 美観、壮観! ……眼福とは、まさにこの事。


 長瀬分隊のオムライスは、藤岡さんが器用に開き、デミグラスソースをかけ、生ミルクを加えた。


 さすが……大手アティロムの社員は、教育が行き届いている!


 次は、ユイの番だ。 ……さっきの動画は近すぎて、お料理しか撮れなかったので、俺は慌てて立ち上がり、鷹音ようおんさんたちの全身が撮影出来るポイントに移動した。 鷹音ようおんさんと落合さんが、素敵なスマイルを俺のスマホに贈ってくれた。


 ユイは、目をキラキラさせてオムライスを見つめている。


 ……! 


 あのユイが、待ちきれない気持ちを自制して、スプーンを手に、ちゃんと『オープン』を待っていた。 食事マナーのしつけは、俺の教育が奏功したようだ。 ……横柄な態度は一向に矯正出来ないが。


 全員揃って、いただきます!


 オムライスも、オニオングラタンスープも、超一流シェフ以上だ。 ……きっと。


 サラダも見慣れない野菜がお皿に盛られ、まるで


 ………野菜の宝石箱だ ←語彙(泣)




 夢のような時間は『矢』どころかファイブGのごとく過ぎ、次は我々、オジカ関東方面混成部隊が、お皿を洗う番だ。


 ……あ、ユイは良いよ! テレビでも観てて。


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 実は以前、ユイにお皿洗いを手伝わせた時、その圧倒的破壊力ジャガーノートにより、全ての食器が、文字通り『玉砕』した。


 以来、我が家は紙皿を使用している。


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 お皿洗いが済み、鷹音ようおんさんが、海外旅行のお土産を配ってくれた。


 男性陣は素敵なネクタイ。 女性陣には……ス、スワロ……ス?フ?だか何だか、キラキラした、宝玉が散りばめられた綺麗なアクセサリー。 


 ユイには、有名な何とか? と言う、何処どこかの国の兵士の格好をした、可愛いぬいぐるみを買ってきてくれた。


 ユイは、初め戸惑っていたが、抱き心地が良かったのか、抱いたまま、鷹音ようおんさんの膝で寝てしまった。


 ……それを眺める鷹音ようおんさんの『温かい目』は、慈愛に満ちている。 


 ……俺はその時


 まさに、これこそが、情報参謀が言っていた『強大マイティ要因ファクター』……愛だ。 ……と、あの議事ドームでの軍議を思い出していた。

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