第9話 正義

 約束の時間まで、まだ1時間以上ある。


 ずは神頼みだ。 ユイ、マジで、やり方見ててよ! バチ当たると嫌だからね。


 二人ずつ、お参りする。 ユイもおっかなびっくり真似してくれた。


「長瀬さ〜ん! たいらさ〜ん!」


 こ!……この美しき川のせせらぎのようなとうといお声は……


鷹音ようおんさ〜ん」と、声に聞き惚れて凝固している俺に代わって、長瀬がナイスな迎撃インターセプト


 ……な、なんで? まだ待ち合わせの時間まで1時間近くあるのに!


「『夏祭り』なんて久しぶりだったので、待ちきれなくて……」


 慣れない下駄をコロコロと鳴らし、鷹音ようおんさんと女性一人、男性一人が来てくれた。


 一応、仕事上の付き合いではあるので、きちんと挨拶し、自己紹介をした。


 鷹音ようおんさんと一緒にいらした方は、同じ受付係の落合真子さんと、その恋人、アティロム物流部の藤岡和雄さんだ。


 こちらも、青木さんとユイは初顔合わせなので自己紹介した。


 ユイは、例によって、「衛鬼兵団えいきへいだん司令、たいら ユイ大将」と名乗ったが、それはそれ、ユイの可愛さに話題が集中し、華麗にスルーされた。


 全く、『可愛いは正義』って本当なんだな……と思った。


 鷹音ようおんさんたちも、ずお参りする……との事で、俺たちも、もう一度お参りした。 


 これは、この奇跡を与えて下さった神様への『御礼参り』だ。

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