第4話 圧倒的破壊力《ジャガーノート》

「チッ、チッ、チッ」……


 ……刻々こくこくと時間だけが過ぎて行く。 心臓の高鳴りは、いくら力を込めても抑えきれない……。


 今日は長瀬が、鷹音ようおんさんを夏祭りに誘うべく、アティロムに行っている。




 ……この前の『第二次鷹音ようおん野華ひろか攻略作戦会議』の際、鷹音ようおんさんを誘う役目を誰がになうか、人選をおこなった。 俺は、真っ先に志願したのだが、3対1の多数決で惜敗してしまった……。


 長瀬が「たいらさんは絶対に浮足立パニクって、さそえる物もさそえなくなりますよ〜」と、スルメをかじりながら言いやがった。


 ……おい! 先輩に向かって、随分はっきり言うなあ。……まあ、否定はできんが。



 俺は、今一度チャンスが欲しくて、事前オーディションを提案した。 これは満場一致で可決した。


 仮想作戦の舞台は俺の部屋、鷹音ようおんさん役は青木さん、ユイは、その他大勢だ。


 ずは俺からだ。


 ……部屋に入ると、早速さっそくユイが俺を迎撃インターセプトして来た。


「やあ! 兄! 今日は何用なにようで参った!」


「あ、あの、え〜っと…」うわあ〜、頭が真っ白に〜 


 ……はい、不合格。 


 おいおい、早すぎだろ〜(泣)



 次、長瀬


 長瀬が侵攻インベードすると同時に、自動警戒管制J A D G Eシステムよろしく、ユイが


「やあ! 長瀬 上等兵! 何用なにようか!」


 ……との高速迎撃インターセプトを仕掛けるも……


「はっ、これはユイ大将閣下! 実は次の連休に『守屋神社参道』にいて、我が『オジカ事務用品関東軍』が交流会を催す予定でありましたが、人数が足りず、増援をう為、貴軍にうかがった次第です!」


 ……え? 正直に言っちゃうんだ……!


 「左様さよか。 ……青木……では無く、鷹音ようおん!」


 ……青木さんが、「は〜い! 聴こえてましたで〜す! 同僚に声をかけて、参加させて頂きますね〜」


 ……はい、カット〜! みんな、役者よの〜。


 迎撃や対空砲火を難なくすり抜け、鷹音青木さんのハートに弾着だんちゃく


 ……あ、圧倒的だ……。


 まさしく伝説の圧倒的破壊力ジャガーノートが、ここにも存在していたんだ! ここまで差がつくと、いっそ清々しい。


 こうして、長瀬がアティロムに行く運びになったのだ。




「戻りましたあ〜」


 長瀬の声だ! 戦果、まずは戦果から!


 ……長瀬は横目で俺を見ながら、指で○を作って見せた!!!


 や、やったあああ〜〜!


 長瀬ぇ〜! お前は、もう曹長に昇格だ!!!


 ありがとう、そして……

 おめでとう、長瀬!


 おめでとう、俺!


 

 しかし、その数日後には、俺の喜びが絶望に変わってしまう事を、この時の俺は知らなかった。

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