第8話 突貫

 鷹音さんの七夕の願いは『すてきな かれしができますように』だった。


 ……つまり……今、鷹音ようおんさんには付き合っている彼氏がいないという事の証明だろう! それがわかっただけでも大収穫だ。 長瀬とユイたちには、感謝しかない。


 ……さて次は、どうするか? この前の長瀬とユイの盛り上がり方で、趣味が合うのが恋愛への近道なのは学習した。 ……とは言え、彼女の趣味など知る由もない。


 趣味を調べる方法、何か無いだろうか? 


 ふと、ユイに目をやると、テレビを観ている。 ……何を観ているかと思えば、テレビショッピングだ。 小洒落た服を着たモデルさんが様々なポーズをして、商品をアピールしている。


 ……俺の視線を感じたのか、ユイが振り返り、目が合った。


「……前々から疑問に思っていたのだが、この次元の者は、何故なにゆえ、奇妙な鉱物を装着しているんだ?」


 ……鉱物? ピアスとかネックレスの事か。


「俺は付けたこと無いから理由は解らないけど、確かに結構付けてる人、いるな」


 ……太古の壁画とかでも、装飾品を付けてる絵画が残ってるくらいだから、もう、人間の遺伝子に組み込まれてるのかも……なんて事をユイに言いながら、ふと、鷹音ようおんさんはどんなアクセサリーを付けてるのかな〜……と思いを巡らせ……


 そうだ! 彼女が身に着けているアクセサリーから、何かヒントが得られないかな?

例えば、楽器のアクセサリーなら音楽が好き……とか、イルカのアクセサリーなら、水族館が好き…とか。 制服を着ていても、アクセサリーは身につけているだろう。


 後は、アティロムに行く為の口実だ。 この前はご用聞きついでにパンフを持って行けたが、今回はそれも無い。


 そうだ! 忘れてたけど、短冊に願いを書いて持って行く事になってたっけ。 


 なんて書こう?


『すてきな かのじょが できますように たいら はちひと』 ……いやあ! これはやり過ぎだろうな…


『せかい へいわ』 ……わるかぁ無いけど、ちょっと漠然としてるかぁ……。


 そうだ! ……俺は、ひらめいた言葉を短冊に書き込んだ。


 よし! 戦闘準備完了! ワレ、就寝セリ!


『明日は鷹音ようおんさんに会えますように…と本当の願いが叶う事を願いつつ、眠りについた。


 翌日、上司の許可を貰い、アティロムに向かった。


 ……ガラス張りになっているアティロムの正面玄関から目を凝らすと、受付に鷹音ようおんさんの姿を見付けた!


 やった! ……と、目立たぬようにガッツポーズを決める。


 やはり彼女が居ると、アティロムの玄関ロビーが華やいで見える! あ、七夕祭りの効果もあるか……。


 回転扉を通り、彼女目掛けて突入を図るも、俺の眼前に、巨大なBー29スーパーフォートレスが立ち塞がった。……じゃ無い、広報部長が立ち塞がった。 ……マジで思考が衛鬼兵団えいきへいだんに感化されてるなあ…。


「や〜あ、へイボン君! この前はありがとう! お陰で七夕祭りは大盛況だよ〜」


 うわっデカい声! あなたは衛鬼兵団うちの総参謀長か!


「まあ、ゆっくりして行ってくれ給え。 わっはっは。」……と、豪快な笑いを残し、去って行った。


 七夕飾りの周りには、小振りな屋台とヨーヨー釣りや射的などがあり、子供達が楽しんでいる。


 それを横目に、この前、手の中で消滅してしまった鷹音ようおんさんの短冊のオリジナルを探していると、誰かに優しく肩をつつかれた。


 振り返ると、


 よ、よ、鷹音ようおんさんだ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る