第5話 七夕

『七夕』……確かに、うちらみたいな事務用品を取り扱う会社にとっては、紙やらサインペンやらが売れるので大事だいじな行事ではあるが、自分でやろうとは思わない! ってか、お前は小学生か!


「冗談ですよ。……今年も毎年恒例の『アティロム』の七夕まつりがあるんで、この前、大量に納品したのを思い出しただけですよ。」


 ア! ア! アティロム!! あの! 鷹音ようおんさんの勤務している会社だ!! ……酔っていて良かった。 そうじゃ無かったら、耳まで真っ赤になった所を長瀬に見られる所だった。



 長瀬を見送り、梅雨の湿った生温かい風を感じながら、俺は心の中でガッツポーズをしていた。


 うまくいけば、短冊に書かれた鷹音ようおんさんの『願い』が見られるかも知れないからだ! 


 長瀬! お前は俺の恋の女神だ! ……もとい、恋の男神だ!



 しかし、その翌々日には、俺の淡い希望が絶望に変わってしまう事を、この時の俺は知るよしもなかった。

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