第9話 願望

 女の子は暫く考えていたが


「言い方を変えよう。 ……貴様、何か『ガンボウ』は無いか?」と言った。


 ガンボウ? 『願望』の事かな?


 それならいくらでもある! お金も欲しいし、彼女も欲しい。健康も欲しいし、地位も名誉も欲しい。 何より、あたしゃ、もう少し背が欲しい。


 ……って、待て待て俺! それでは欲のかたまりだ。


「そうだな……」


 ふと横を見ると、お母さんに連れられた何処どこかの子が、持っていた風船を離してしまったらしく、大泣きしている。


 そうだ!


「あの子の風船を取ってあげられる……かな?」


 女の子……司令官が不敵な笑みを浮かべ


「心得た!」


 と言ったのち、俺の胸ぐらを掴んで引き寄せた。 しかも、すっげー馬鹿力! 大の男が満身の力を込めてもピクリとも動けない!


 な! 何? 殴られるの!?


 女の子は至近距離で俺を見上げつつ


暫時ざんじ拝借」

 

 と言って、俺の胸に貼り付いている『司令徽章』に、矢継やつばやに司令を下した!

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