第1章『運命の出会い』

第1話 不思議な少女

 ある日、コンビニで弁当を買ってアパートに帰る途中、夕陽があまりにも綺麗だったので見惚みとれていると、突然『キューン』という、聴き慣れない音がした。


 そちらに目をやると、金ピカに輝く鳥? みたいなもんがこちらに向かって飛んで来た!


 ……慌てて身構えたが、そいつは俺の頭上で急停止し、カエデのたねのようにクルクル回って、足元に落ちた。


 拾い上げると、ちょっとカッコ良い『龍のバッジ』? のようだった。


 何気なくそれを胸に当てると、まるで磁石のように、胸に貼り付いた。


 引っ張るが……取れない!


 な、なんで!?


 まるでバッジに意思があり、離れるのを拒んでいるみたいだった。


 高価な物だとまずいと思い、そのまま交番へ行こう……と歩き始めた俺の前に、突然誰かが立ち塞がった。

 

 ……!? 


 女の子だ! 


 ……この子……今、何も無い空間から、ひょっこり『出現』した……よね!?


 何回か目をこすったが、女の子は消えない。


 年の頃なら13、4歳か? おさなさの中にも気品があり、あと数年もすれば誰もが振り返る美人になるだろう。


 試しに、女の子の左のほっぺたを指で押してみると、張りのある肌の感触が指に伝わって来た。


 その子は、俺の手を払い


「……貴様、何奴なにやつ? 所属と階級を申せ」と、アニメのキャラクターみたいな声で言った。


 まぼろしでは無いようだ。


 その女の子は、まばたきひとつせず俺を見詰めている。 その黒目勝ちな瞳は澄み切っていて、まるで宝石のようだ。


 俺が状況を把握しきれずにフリーズしていると、その子は、顔を俺の鼻先まで寄せ


「所 属 と 階 級 を もう せ !」


 と、より強い口調で繰り返した。 顔、近過ぎだろ!

 

 ……『ショゾク』と『カイキュウ』?


「お、俺は『オジカ事務用品』所属の『たいら 盆人はちひと』だ。 階級? は……『平社員ひらしゃいん』だ」と言った。


 すると、女の子は某〇ルトラマンのように胸を張り、腰に手を当て


「あたしは『衛鬼兵団えいきへいだん 総司令『✣☆∆⁇♧◇☆大将』だ」


 と、高らかにのたまった。


 ……? 


 名前は不思議な発音で聴き取れなかったが、どうやら『なんとかヘイダン』の『ソウシレイ』? らしい。


 兵隊さんごっこ? 


 ……今時いまどき時代錯誤もはなはだしい。


「その『ソウシレイ』が……何の用?」

 

 女の子は無言で、俺の胸に付着したバッジを指差した。


「あ、ごめん! これ、君のか! 返すよ。 ただ、取れないんだ」


 ……また力を込めて引っ張る……が、やっぱり取れない。


「それは、既に貴様の所有物だ。 持っておれ」


 ……拾い物の持ち主があらわれて、そいつが『持ってろ』……って言ってるんだからネコババにはならないだろう。


 ただ、がし方は是非ともおかせ願いたい。


 と……!


 女の子が視界から消えた。 辺りを見回すが、何処どこにも居ない。


 ……ま、良いか……。 腹も減って来たし、帰ろ……と思った数秒後、また女の子が現れた。 


 ちょっと腹が立ち……


「何だよ! 出たり消えたり……」


 と言うと、その子は初めて表情をゆるめ、可愛らしい微笑みを浮かべて一言ひとこと……


重畳ちょうじょう


 とつぶやいた。



「チョウジョウ……?」と聴き返そうとした時、俺のに激痛が走った!

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