『恋愛は戦争』って言うけど、俺の片思いが本当の戦争に発展するとは思っていなかった!

コンロード

プロローグ ……また逢う為の『エピローグ』

 ここは『衛鬼兵団えいきへいだん』の『中枢議事ドーム』


 その中心で、傷痕が生々しい巨大な猛獣のような『作戦参謀』が、いつになく沈痛な口調で発言していた。


「……以上の事から今次こんじ『斬鬼軍』戦が終結するまで、総司令閣下からは我々の、我々衛鬼兵団えいきへいだん兵士全員からは『タイラ ハチヒト』という人物の、全ての記憶を消し去る事とした」


 …………………え?


 俺の横の『副官席』に座っていた、女子中学生くらいにしか見えない総司令『ユイ』が


「万が一、我等が捕虜になった時……或いは貴様が捕虜になった時、ほんの僅かでも互いの記憶が残っておらば、恐らく貴様は、奴らに消されるだろう……」と、寂しげに言った。


「じゃあ、これで俺たちはお別れ……ってこと?」


 ユイは……


「案ずるな。 我等のきずなは『司令徽章きしょう』に記憶させてある。 ……もし、我らが今次戦こんじせんに勝利したあかつきには『司令徽章』が貴様を探し出し、再び我等を結び付けてくれるであろう……」と言って、いつもの不敵な笑みを浮かべた……が、その笑顔は明らかに歪んでいる。


 ……今回は『対衛鬼兵団』に特化した『斬鬼軍』との戦闘だ。 ユイでさえ勝利を確信出来ないのだろう。


「……もし、お前たちが負けたら……それこそ、もう本当に会えなくなる……のか?」


 ユイは、今迄いままで見た中で最も悲愴でそれでいて最高の笑顔を俺に向け、こうのたまった。


「安心せい。 我が衛鬼兵団えいきへいだんは、『無敵』だ!」



 ……焔の龍のような軍医が現れた。 


 俺たちの記憶を消す為だ。


 ……俺とユイは、初めて固い握手を交わした。


 俺が彼等『衛鬼兵団』に初めて出会った日から一度も外せなかった『司令徽章』が、悲しいくらい簡単に胸から離れた。


 俺は司令徽章を両手で抱え


『必ず、帰って来いよ!』


 と念を込めてから、ユイに手渡した。



 ……見渡すと参謀たちが、俺に向かって最敬礼している。 情報参謀や、通信参謀、作戦参謀に、総参謀長……。 皆、悲しんでくれているように見えた。 俺も、最敬礼を返した。


 そして、ユイ……


 ……ユイは、本当の最後に、俺の胸に飛び込んで、声を上げて泣いた。 ……俺もつられて涙を流した。


 ……このままでは、きりがない。


 俺は、軍医に視線を送り、一礼した。


 軍医が答礼し、装置をこちらに向けて、火炎のようなビームを照射した。 


 ……それは『蒼い焔』だった。 その寒々さむざむしい色は、ユイや衛鬼兵団えいきへいだん、そして俺の、涙の色を模しているようだった……。



 ……それから数ヶ月後……


 コンビニで弁当を買い、アパートに帰る途中、夕陽があまりにも綺麗だったので見惚みとれていると、突然『キューン』……という聴き慣れない音がした……

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