僕はヒーロー

 あの輩共が大嫌いだ。あの無知蒙昧な人たちが。

 彼奴等は自分のばかり述べては僕を貶す。酷いなんて言葉で表現する事は無理に等しすぎる。

 あの子供ももう、僕の事を忘れ切っているに決まっている。あの日本語の可笑しな子供を私は救った事を後悔している。あいつの所為で誘拐犯だと勘違いされてもう面を被っての生活を余儀なくされた。

 敷居が高いからか僕の家の前を通っても何もしない。それで良いんだ、僕自身もお前に対して危害を加える気はさらさらない。

「働け!」

 やってます。働いております。それなのに何故評価されないのか。不思議でたまりません。部屋の清掃や書類の整理、企画案を出したりと様々な事をしているにもかかわらず、何故僕は評価されないのか。

 英語も堪能で、イタリア語にフランス語も話せるのに誰も何も言わない。悲しさよりも虚しさが勝ってしまった。

 誰かと群れてみたい。人と群れてみたい。そんな願望だけが充ちてしまう。嫌だとはオモワナイ、それが大事な感性だもの。

 幼少期から独りだった。兄が居るからか、母も父も僕を見てくれない。中学生に成ってから僕を気に掛けた。それじゃもう遅いんだ。

 恙ないように生活してきたけれども、そんな事は出来ない。辟易してしまう。

 人助けをする事は悪い事なのでしょうか。

 人助けをしない事は悪い事なのでしょうか。

 どちらも悪い事だという事は判り切っている。実際に自分がして、苦労を重ね、しなければまた叱咤される。理不尽とは僕の為に作られた言葉ではないかと思案する。

 歌を奏でる事も出来兼ねてしまう。独りで奏でる事はからいんだ。

 光に満ちた空を見上げようとしても、在るのは天井だけ。

 この檻に閉じ籠ったままの僕を救ってくれるヒーローは居ない。自分がヒーローなんだから、ヒーローを助けるヒーローは居やしない。存在してほしくないという願いが先行しているのもある。

 弔ってくれないか。誰でもいい。あくまでいいんだ、いつの日かで。

 言葉も拙くなってくる。人と話していないからだ。自分の脳だけで会話しているんだもの、言葉も可笑しくなっていく。心が欲しい。

 どこかへ行った僕の気持ちは飛んで往ったことにはならないんだよ、きっと。

 部屋は酸素欠乏だ。

 H2OとCO2だけが部屋を包んでいく。

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