僕はヒーローに成りたい

@23922392

私はヒーローに成りたい

 私はヒーローに憧れている。どんなに強い人にも立ち向かう。そんな人になりたい。けれども、それは容易い事ではない。

 知っている。難しいという事ぐらいは解っている、解り切っている。

 それでも憧れてしまう程だが、類稀なる力を持ち尚且つ頭が良くなければならない。

 私の今の力では足りない。最も、そんな人人は居はしない。その事柄も知っての上。

 心を持って、人を助ける事こそがヒーロー足る所以。なのに、町人まちびとは彼達を嘲笑い、怪しそうな目を差す。やめてほしいとさえ思うが、思うだけ。私には未だ心が無い。それを知っての事か、彼達は私を余所者として扱う。それで良いとさえ思えてしまう。守ってくれているのだから。

 空を飛ぶ事は出来ない、家を壊す事も出来ない。情けないと考えてしまった日もあったが、嫌だと声を荒らげる訳にもいかない。

 影で助ける者をヒーローと呼んでいる。なぜなら目立つヒーローはヒーローに非ず、ただの人に過ぎない。ししが無くともいい、むくろのみをも動かし、活き活きとしたヒーローに成りたいのだ。

 花が散る春の終わり頃、その人に出会ったのだ。いきが籠った声色に嬉しさが鰻登りになっていた。

 たった一枚ひとひら花弁はなびらを追って、川に落ちそうになったのを助けてくれたその人を今でも思い出す。志を持ったのもその時からだ。

 家の近くの祭りで山車だしを牽くその人を見た時は憧れよりも虚しさがまさってしまった。その訳を話すのも辛い事は言うまでもない。

 夏は知らぬあいだに過ぎ去っていく。めでたいものではない、全人まとうどな私がその事で憂いている事すら誰も知らない。彼もその一人。

 空を見れば星で満ち、光は速く動く。あんなモノに成れたならと想いを馳せるのみ。

 ひそかに偲ぶ事も許されない。今よりも上へ、その上よりも上へ。高みを目指して。

 バスの中でも腰掛けには座らない。他に座る人が居るのだから、譲るだけ。それがヒーローに出来るちっぽけな事なのだから。

 大きな出来事も小さな出来事もなら同じとして捉えるんだもの。憧れよりも夢が先を行ってしまっても、必ず叶える。

 その為にもヒーローを真似まねていくだけ。いや、真似るだけでは活けない。更に良いモノ求めなければ。

 その為にも伝いたいこの旨。

 会いに行く事は出来兼ねる。故に、家の周りを歩こう。そうだ、そうしよう。そうしたら、いつの日かきっと、声を掛けて下さるに違いない。

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