『CITY HUNTER~愛よ消えないで~ CITY HUNTER 一期 OP』 なんでさっきからBGMが全部、デーモン閣下なんです?

 クリスマス、はやせはリンの家にお呼ばれする。


 そこには、唱子先輩と優歌先輩もいた。


「先輩たちも、誘われていたんですね?」

「ええ。二人きりのほうがいいでしょう、と、遠慮したのですが」


 黒タイツのサンタ姿で、唱子先輩が言う。

 超ミニスカなんて唱子先輩らしくはないが、内申では案外楽しんでいるのかも。


「でも、唱子さん、はしゃいじゃってさぁ」


 優歌先輩も、ホットパンツのサンタだ。大胆に胸が開いている。


 リンは外国人だ。

 彼女にとってクリスマスは、「気心の知れた人たちと祝うもの」なのである。


「メリークリスマス」


 今のリンは、トナカイの着ぐるみだ。

 といってもピッチリしていて、体のラインが隠せていない。


「おう。お誘いありがとうな。手みやげは、なにも持ってこなくてよかったのか?」


 チキンやケーキはかぶりそうだったので、持ってこなかった。


「いい。はやせが来てくれるだけでうれしい」

「うん。オレも会えてうれしいよ、リン」


 二人でお互いのスマホを構えて、セルフィーをパシャリ。


 リンが同居人の親戚から学んだお手製の料理で、ワイワイと楽しむ。


「ではプレゼント交換会と参りましょう」


 はやせもたくさんプレゼントをもらう。


 唱子先輩からはアニソン作家の全集だ。しかも、まったく手持ちのCDとかぶっていない。


「さすがに、パチソンは止めましたわ。琴線の当たり外れが大きいので」


 優歌先輩は、全員にクッキーを焼いてきた。

 持ち帰らせるのも悪いと思って、その場で食べられるものにしたらしい。

 その優しさと合理性が、いかにも優歌先輩らしかった。


 リンも同じ理由で、料理を振る舞う。


 はやせは、みんなにソフトキャンディを配った。

 瓶が動物の形になっていて、洗って小物入れにもなる。


「ありがとうございます、はやせさん。センスが光りますわ」

「どうも。ところで……」

「はいなんでしょう?」

「今、クリスマスですよね? どうして、さっきからBGMが全部、デーモン閣下なんです?」


 はやせは、部屋中に流れるデーモン閣下の歌声が気になっていた。


 今は、『CITY HUNTER~愛よ消えないで~』がかかっている。


 しかも、公式配信チャンネルから引っ張り出しているらしい。


「聞きたいですの?」


 唱子先輩が、目からハイライトが消えた状態に。


「試験休みの間も、ずっと受験勉強に勤しんでいましたので」

「お疲れさまです」


 だから、衣装に気合が入っているのか。

 現実逃避したいのだろう。

 はやせへのサービスなどではない。


「ですから、今日はデーモン閣下の歌でお祝いですの。幸せを願いつつ、自分たちの業を浄化するためですわ」


 まあ、ラブソングだからいいか。歌っているのが悪魔ってだけで。

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