『White Love:世紀末オカルト学院 予告』 『しんみつ』な関係になった。

「いやあ、スケートリンクは強敵でしたわね」


 ぜえぜえ、と、唱子先輩は優歌先輩に肩を貸してもらっている。


 はやせも似たようなものだが、唱子先輩ほどではない。


「後半戦はムリっぽいね。お開きにしようか」


 優歌先輩のすすめで、昼食に。


「温かいものがほしいですわ」


 通りを歩きながら、唱子先輩がポツリとつぶやいた。


 うーんと悩み、優歌先輩は一軒の看板を見つける。


「じゃあ、焼き肉なんてどうかな? 雰囲気でないけど」


 しかも、ホルモン系のお店だ。

 換気扇から、もうもうと煙が立ち込めている。

 飲み屋と併設しているためか、昼から酒を飲んでいる客も多い。


「ああ、年末って感じでいいですわね。席もちょうど、空いたみたいですわ」

「こういう時期じゃないと、お昼からお肉なんて食べられないし。明日は予定はなにもないから。リンちゃんどう?」


 優歌先輩が、リンに問いかける。


 チェーン店ではないから、すこし勇気がいった。

 でも、優歌先輩は入りたそうだ。

 割と、こういう地元感の強い店がスキなのだろう。


「食べたい!」


 リンも承諾した。


「オレも、助かります」


 高校生になったばかりで、はやせはシャレたお店なんて知らない。

 こういう隠れ名店スポットも知っておきたい、と思っていたのだ。


「唱子さんは?」

「もちろんOKですわ」

「じゃあ決まり」

「オトナのお店に入るみたいで、胸が高まりますわね」


 はやせたちは、オトナの階段を登ることにした。


 なんだかはやせも、ドキドキしてくる。


 全員が、ホルモンセットとライスをオーダーした。


「すごいですわね。有線でかかっているのは、『White Love』ですわよ。明らかに客層とミスマッチですわ」


 たしかに、この店だと演歌とか流れていそうだが。


「こういった統一感のなさも、個人営業店の面白さなんだよ」


 優歌先輩は楽しそうだ。


 ホルモンが、ロースターの上でジュワッと焼き上がる。


「ちょっと目が痛い」


 煙にやられて、リンは目をしばたいた。


「そうか。おしぼりで目を拭こうな」


 リンの目を拭いたが、それでも目を開けられそうにない。


「口開けて、リン。ほら」


 はやせはホルモンを箸でつかみ、リンの口へ放り込む。


「熱いから気をつけろ」

「はふはふ……おいひい」

「よかったなぁ」


 うん。リンのいうとおり、うまい。


「あの、はやせさん」

「どうかしましたか、唱子先輩?」

「お箸を共用しましたわ」


 しまった! リンが口をつけた箸を使ってしまったか。


「いい」


 今度は逆に、リンがはやせにホルモンを食べさせた。


「んぐ、リン?」

「これで、わたしとはやせは『しんみつ』な関係になった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る