マイナーアニソンが、恋に溶ける

『EZ DO DANCE:プリティーリズム・レインボーライブ OP』 いかにもあなたたちらしいデートですわね

「ダブルデートですか?」


 リンとのデート初日。


 待ち合わせの場所に唱子先輩と優歌先輩がいた。


「はい。みんなと一緒のほうが楽しいと、リンが」


 期末試験でみんなと集まっただけでは、不満だったらしい。


「ごめんね。二人きりになりたかったなら、お邪魔だったよね」


 優歌先輩が遠慮するが、はやせは気にしなかった。


「大丈夫です。二人だけで集まりたいときは、きっとリンからもシグナルが来ると思うので」


 リンはいつだって、はやせになにかしてほしいときはモーションを掛けてくる。


 はやせ自身、それを楽しみにしている自分がいた。


 だから、これでいいのだ。


「で、デートの内容はどうしよっか?」


 アクティブな性格のリンに、映画という選択肢は思いつかない。

 冬休みなので、どこも子ども向け映画で混んでいる。


「スケートがしたい」

「あっそういえば、ここって」


 リンがどうしてここに来たがっていたか、ようやくわかった。


「あそこ?」


 優歌先輩が指を指したのは、駅前にできた屋外スケート場だ。


 今日から、このスケートリンクが解禁されたのである。


「いかにもあなたたちらしいデートコースですわね」


 唱子先輩が、うんうんと納得した。


「いいですわ! プリティーリズムのような華麗なダンスをお見せ致しましょう!」


 シューズを履きながら、唱子先輩が一番やる気を出す。


「よよよ……」


 しかし、一番へっぴり腰だった。


 スケート場内にかかっている『EZ DO DANCE』も、実に悲しげである。


「はやせ、できる?」


 慣れた様子で、リンがリンクへと立つ。


「実は、オレも似たようなもんなんだ」


 はやせは、あまり運動が得意ではない。正直いって、自信はなかった。


「手を掴んであげる」


 リンから差し伸べられた手を、はやせは掴む。


「ゆっくり行く」

「頼む」


 ついていけるように、はやせはできるだけ足を動かす。


「慌てない」

「お、おう」


 一方、唱子先輩はいまだスタート地点にいた。

 尻餅をついた先輩は、優歌先輩に引き上げてもらっている。

 ようやく動くらしい。


「よそ見すると、あぶない」

「そうだった! うお!?」


 うっかり速度を上げすぎて、はやせは小さい女の子にぶつかりそうになる。


「はやせ!」


 リンに、前から抱きしめられた。

 そのまま、二人して壁に低速で激突する。


「悪かった。リン。無事か?」

「平気。ケガはない?」

「オレはいい。さっきの子は大丈夫かな?」


 周りを見ると、ぶつかりそうになった少女は母親に連れられてリンクの流れに乗っていた。なにごともなかったらしい。


「よかった、ケガはないみたいだ」


 お互いの無事を確認しても、二人は抱き合ったままだった。


「あの、もういいんじゃないか?」

「このまま、先輩二人を待つ」


 リンは当分、離れそうにない。

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