『fragile:フラグタイム ED』 カップルオーラに阻まれていると

 早いもので、もう期末試験だ。


 はやせたちは、唱子先輩の家で勉強をさせてもらっている。

 リンの叔母であるエルマが世話をしてくれるので、ちょうどいい。


 昼食の時間となって、食事休憩を取ることに。


 出された料理は、大皿に盛られた焼きそばである。


「ありがとうございます。いただきます」

「どういたします」


 たどたどしい日本語で、エルマも返す。


「リンは、クラスに馴染めていますか?」


 叔母のエルマが、はやせに尋ねてきた。

 やはり、リンのことは気になる様子だ。


「溶け込んでいるどころか、話題の中心ですよ」


 しかし、クラスのみんなはリンを遠巻きに見ているだけである。


「リンが話しかけると、みんな受け答えするみたいですけど、向こうからは特に」

「なるほど。カップルオーラに阻まれていると」

「カッ……!?」


 はやせは、何を言われたのかよくわからなかった。


「うかつに飛び込めばヤケドするような、熱々な空気。ほほえま」


 話しながら、エルマは一人で盛り上がっている。


「まあまあ。こういうのは自然な流れに任せよっ」


 優歌先輩が、助け船を出す。


「ですわ。休憩がてら『フラグタイム』を見ましょう」

「お昼ごはん後なのに、ガッツリした百合アニメだねぇ」

「わたくしは、焼きそばをオカズにライスをいただけるほどですわ」


 実際、唱子先輩はそうやって焼きそばを食べていた。


『フラグタイム』は、動画配信サイトで公式配信されているのだ。


 内容はひとことでいうと、時間停止ものの百合である。


「いいですわぁ。二人共、ややヘンタイじみているところがなんとも」


 ライスと焼きそばを交互に食べながら、唱子先輩は映画に夢中になっていた。


「視聴者を突き放す加減が、程よく絶妙ですわ」

「真正面から蹴りを入れているふうにしか、見えないけれど」


 優歌先輩の意見に、はやせは賛成だ。


「時間停止モノは、ヤラセと聞きました」


 エルマが、話に割り込んでくる。


「あれはオトナな作品のアレですわ」

「なるほど。しかしこれまたセンシティブ」


 たしかに、このアニメ映画にはセクシャルな一面もしばしば。


 リンも、食い入るように見ていた。


「だから、食事中に見ると気まずいよって言ったのに」

「作品に罪はありませんわ!」

「あんたが罪人だって言ってるの!」


 この部に入って長いが、随分と二人はくだけた付き合いになったものだ。最初はどこか、よそよそしかったのに。


 映画が終わり、感想会になる。


「二人は、この映画みたいな関係に憧れたりは?」

「わたくしは、もちろんしますわ。ですが、こういうのはフィクションだからこそ楽しめるのかもしれないと、最近は思うようになりましたわ」


 自然体が一番いい、と唱子先輩は考えるようになったらしい。


「あなたはどうですの?」

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