『恋愛サーキュレーション:化物語 OP』 オレ、『くん』です

 イントロクイズは、はやせたちの惨敗だった……。


「呼吸音だけで『紅蓮華』がわかるって、すごい」


 あれだけハッスルしていたリンが、今や廃人と化している。


「『恋愛サーキュレーション』も、イントロのセリフだけで当てたぞ」

「しかも、英語版とか」


 いくらtiktokでかかっているからって、わかるのか?


「若い子には、英語版の方が有名じゃん?」


 あっけらかんと、来住さんは言う。


 いつの時代の「若い子」を、いっているのだろう? というより、あのイントロだけで曲名が出るということ自体がもはや規格外なのだ。


「これがクイズ校こと、長戸高校の実力か」

「いえいえ。彼女たちが異常なだけですわ」


 唱子先輩をして、「そこまで詳しくない」と言わしめるほどである。


 優歌先輩に至っては、ニコニコしているマシーンと成り果てた。会話に入っていけないのだ。


「えっと、これでわかってもらえましたでしょうか?」

「はい。よくわかりました。唱子先輩」


 もはや、人間では太刀打ちできないレベルである。


 しかし、来住さんと渡り合える人が現れたら、それはそれで楽しいのではないだろうか。いるかはわからないが。


「本番が楽しみですわ!」

「そうだねー。唱子さんも元気そうでよかったー」


 唱子先輩と来住さんが、握手をかわす。


「中学時代の唱子先輩って、どんな感じだったんです?」


 お嬢様学校に通っていたと聞くが。


「無気力で、友達ほぼゼロだったもんねぇ」


 来住さんとは、話す程度の仲だったらしい。


「今では、優歌さんがいるので楽しいですわ」

「そっかー。ワタシらじゃどうしようもなかったのに。ありがとう。優歌ちゃんのおかげだよ」


 優歌先輩の手を、来住さんが両手で掴む。


「いやあ、わたしはそんな救世主じゃないって」


 と、いいつつ、優歌先輩も元気になった唱子先輩を見てうれしそうだ。 


「ところで、長戸高校の文化祭だと、何をするんです?」

「ウチはねぇ、『嘉穂ちゃんにクイズ勝負で一問でも勝てたら、景品ゲット』という企画をするわよ」


 来住さんが、楽しそうに説明した。


「楽しそう! やろう!」


 リンが、ハッスルしている。


「こういうわけで、そちらにもお邪魔していいかな、福原くん?」


 まあ、来住さんの実力を知ってしまった以上、一筋縄ではいかないのだろうけれど。


「もちろんだ。いつでも来てくれ。詩道さん!」

「お待ちしていますよぉ、詩道さん!」


 あ、そういえば……。



「すいません、ふたりとも。実はオレ、『くん』です」



「えええ!? 男子なのかあああああ!?」


 福原くんと津田さんが、のけぞった。


 そういえば、ずっとこの格好だったっけ。

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