『愛は勝つ:オオカミさんと七人の仲間たち キャラソン』 最もタイトルと不釣り合いなキャラのカバーですわ

 はやせは身体ごと顔を背ける。


「ちょっと先輩方!? リンも何を!?」

「タオルの中に、スク水を着用しています。なので、ご安心を」


 外した肩紐を、唱子先輩がバスタオルからヒラヒラと取り出す。


「そ、そうですか。って、それでもダメですよ!」

「ちなみに、リンは丸裸ですわ」

「余計にダメじゃないですか!?」

「そう申されましても」


 後ろを向くはやせの肩に、リンの腕が回った。


「リン!?」


 そのままリンが、はやせを抱き寄せる。


 高校生にしては強すぎる弾力が、はやせの背中で潰れた。


「ちょっと、どうして」

「リンが『夏の最後の思い出を手放したくない』と聞かなくて」

「いくらなんでも、刺激が強すぎなのでは?」


 しかし、リンはそれ以上何もしてこない。


「まあ、これがリンの限界ですので」


 リンは、はやせの背中にもたれながら寝てしまったようだ。


「はやせ君はさ、わたしたちがいわゆるラッキースケベ的な行動をとっても、まったくムラムラしないでしょ?」


 バスタオルを直しながら、優歌先輩が前に回り込んできた。


 たしかに一瞬ドキッとはするが、それ以上の感情は湧かない。


「背徳的な状況に立たされ、生理的な反応はしますでしょう。けれど、けれど、あなたがそれ以上の行為には及ばないと、我々は確信しております。その安心感に、リンは惹かれたのでしょう」

「そうなんですかね?」


 背中で寝息を立てているリンの手に、自分の手を添える。


「『オオカミさんと七人の仲間たち』でもいうではありませんか。『愛は勝つ』と」

「キャラソンじゃないですか」


『心配ない』ってレベルじゃねえぞ、と、はやせは思った。


「ええ。最もタイトルと不釣り合いなキャラのカバーですわ。最も愛が勝つとは信じていないでしょう」


 カバーしたキャラクターは、作中では女好きのフェミニストである。


「ウフフ。ではリンをお願いします。我々は、後から入り直しますね」


 唱子先輩はそう言って、風呂から上がった。近くのベンチで体を冷やすという。


「ほら、体を洗うからついてこい」

「うーん」


 なんとか覚醒したリンが、石鹸で身体を泡立て始めた。


「水かけるから、うずくまってろ。目をつぶっておいてやるからな」

「うん。うわっぷ」


 できるだけ意識しないように、シャワーを掛けてあげる。


「着替えは、自分でやれよ」

「大丈夫」


 はやせの後から出てきたリンは、パジャマのボタンが一つずつズレていた。


「まったく」


 ボタンを止め直してやる。 


 はやせが寝室に向かうと、着替えの入ったかばんを持ってリンがついてきた。寝室まで。


「お、おいリン、何を」

「今夜は寝かせない」

「な、なにいって!?」


 ただ、リンがバッグから出したのはトランプだった。

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