『夏休みは終わらない:夏色キセキ 劇中歌』 ビーチでバレーなんて、都市伝説ですわ

「はやせさん、おまたせしましたの」


 唱子先輩が、ブルーのヒモビキニで現れる。


「すごいイメージチェンジですね」

「リンがヒモビキニにしたいというので、この際だからと新境地を開いてみましたの」


 どうせ上にラッシュガードを着るのだから、と唱子さんはケロッとしていた。


「とりあえず、おそろいにしてみたよー」


 対する優歌先輩は、同系統のピンク柄だ。ノリがいいとはいえ、あまりにイメージとかけ離れている。普段ならヒモなんて絶対に嫌がるはずだ。リンに触発されたのかも。


 さて、リンはと言うと。


「一応、おそろい。でも胸のサイズは勘弁」


 ドルン! という凶暴なサイズを胸に携え、リンが登場する。牛柄ヒモビキニという、大量虐殺スタイルで。


「今年の干支を教えてあげただけなのに」

「ある意味、正しく日本にかぶれていると言えますわ」


 海水浴場にいる男性陣の視線を、リンは一手に集めている。


 リンって、こんなにスタイルがよかったのか。


「でも、ある意味でバランス取れているんですよね」

「ラッシュガードを着たほうがエロいって、反則だね」


 優歌先輩の言う通り、破壊力がすさまじい。


 制服のときは、まったく気づかなかった。水泳の授業でも、マジマジと見るわけにはいかず、視線をそらしていたし。


 他の男子も、リンがこんなに爆乳だとは知らなかっただろう。


「どうやって、隠していたんだ?」

「スポブラ」

「それだと、余計にブルンブルンになるだろ」

「両腕でホールドして、揺れを防いでいた」

「そこまで大事にしていたんだな」

「はやせにしか、見せたくなかった」


 一瞬、はやせはドキッとなってしまった。


「これは、何かが起きそうな予感だね」


 優歌先輩が、ニヤニヤとする。


「うまくいかなかったら、『夏色キセキ』のように願いが叶う石に頼んでタイムリープすればいいですわ」

「それ死亡フラグですよね?」


 はやせのツッコミも聞かず、唱子先輩は口を「おほほ」と抑えながら、「夏休みは終わらない」を口ずさむ。


「で、何をして遊びます?」

「それなんですけれど……みなさんに大切なお知らせが」


 神妙な面持ちで、唱子先輩が切り出す。


「なんですか?」

「……ビーチでバレーなんて、都市伝説ですわ」

「ああ、はい。知ってます」

「ですわよね!? そんな光景、アニメでしか見たことありませんもの! あれはもはや、概念ですわ!」


 手をワナワナさせて、唱子先輩は力説する。


 言われてみれば、そうだ。ビーチで円陣を組んでトスバレーなんて、あまり見かけない。

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