『世界でいちばん熱い夏:八月のシンデレラナイン 挿入歌』 時代がおいつきましたわ!

 父方の実家から、唱子先輩と優歌先輩も連れてこいと言われた。


 優歌先輩の父親と、はやせの父親は同級生だったとか。不思議な縁である。その縁があって、マイナーアニソン研も連れてこいとのこと。


 もっとも、単に父親どうしでゲームしたいだけのようだが。田舎とはいえ、ネット環境もある。ゲームも最新のものが揃っているので、退屈はしないだろう。


 事情を説明すると、「リンとともに、車でこちらに向かう」という。


 アウトドア用の軽が、家の前に停まる。


「元気そうだな、詩道!」

「大島もね。今仕事中なんだ。終わったらハチナイやるぞ!」


 はやせの両親は、さっそく優歌先輩の親とゲームの話をしている。


「三日間、よろしくおねがいしますわ」と、マイナーアニソン研の面々が頭を下げた。


「なに、大島のお嬢さんと、お友だちだ。ゆっくりしていきなよ!」


 はやせの両親が、気さくに返答する。


「海の家をなさっていらしたのですね」

「いまでは流行に乗って、道の駅として改装していますが」


 唱子先輩の言うとおりだ。はやせの実家は、道の駅を運営している。

 元々はコインスナック売り場だったのだが、時代とともに博物館化した。

 レトロ自販機を看板として、経営方針を変更したのである。


「そうだ。みんなは海に行ってなさい。夕方は庭でバーベキューするから、それまでには帰ってくるんだよ」


 父親の言葉に、リンが「バーベキュー!」と反応した。


「楽しみだな」

「うん。楽しそう」


 唱子先輩たちを見ると。レトロゲームを興味深そうに見ていた。


「レトロゲームがたくさんですわね」

「ウチの名物の一つです」


 バブルの頃から、珍しい筐体を集めては設置するのが、祖父の楽しみだったそうである。


「でも、ゲームは撤去するんですって」

「どうしてですの?」

「今年の六月に祖父が亡くなって、管理する人がいなくなったので。このゲームを目当てに来る方もいるんですが、絶対数が少ないからって」


 筐体は大切にしてくれる業者や愛好家に譲って、地元の名産を置くスペースに変えるという。


「お父さんたちが遊ぶゲームも、パワプロじゃなくてハチナイってのも、時代を感じさせるよね」

「いまハチナイは熱い。今年は、女子の高校野球も甲子園で行われる」

「ほんとに?」

「決勝だけだけど」


 優歌先輩が驚いている。


「時代が追いつきましたわ!」


 諸手を挙げて、唱子先輩は興奮した。


「では、遊び納めをいたしましょう」


 年代物の野球盤を見つけて、唱子先輩は提案した。


「負けたら荷物番ね」

「ええ。負けませんよ」


 海に入るまで、みんなで野球盤を楽しむ。



 世界でいちばん熱い夏が、始まった。

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