マイナーアニソン 二度目の夏
『ハイスクールララバイ:夏のあらし!〜春夏冬中〜 挿入歌』 他人は変えられない
終業式が終わり、夏休みに。
はやせも、今からワクワクが止まらない。
早々と教室を去る者、部活に向かう者、図書館へ急ぐ者を、はやせは見送る。
だが、立ち止まっている人物が、ただ一人。
「あーいいなあ、マイナーアニソン研は」
夏休みが始まるというのに、友人のサトルは浮かない顔だ。
「どうしたんだ?」
「夏休みの中盤まで、ずーっと同人誌の締切に追われるんだよ」
日本最大の同人誌即売会に、サトルたちアニメ研もサークル参加するのだという。
どちらかというとアニメ好きによるファンブックというスタンスなので、商売っ気もない。熱い場所でただものを売るだけの行為になっている。
だが、部は「参加そのものに意味がある」と主張しているそうな。
「まあ、サークル参加は並ばなくていいもんな。それなりの大変さはあるが」
「どうだか。他のサークルとの交流が目的だからなー」
よって、できの悪い作品を作っているのだとか。
「相手サークルのの迷惑になってなかったら、いいんだけどな」
サトルとしては、参加する以上はいいものを作りたいのだという。しかし、部の質の悪さからそれは望めないと。
「でもなぁ。オレの専門はロボットアニメなんだよな。受け入れられねえかなぁ」
シュンとなったサトルに、はやせは声をかけられない。
「どうにか、サークルの意識を高められないか? どう言えばいいんだ?」
集団行動自体が苦手なはやせに、明確な回答は出なかった。
「リン、なにかアドバイスはないか?」
はやせは、リンに意見を求めた。
「ハイスクールララバイ」
なんと、昭和に流行した名曲のタイトルが返ってくる。
YMOのメンバーが「三〇分で作ったのに大ヒットした」と驚いていた。
アニメ「夏のあらし!」の中でも歌われれている。
「曲の中で、主人公の書いたラブレターも読まずに破られる。最後まで、相手にこちらの好意は伝わらない」
「お、おう。と、言いますと?」
「他人は変えられない」
シビアな意見が、リンから返ってくる。
「ムリかー。話せばわかると思ったんだが」
「精神科医も動画配信で語っている。変えようと思っても、理想と違ってくる。こっちのストレスが溜まるだけって」
紛争状態の祖国を、見てきているからかと。
「だよなぁ」
無理とわかり、サトルはうなだれた。
「いっそ、個人で作ってネットで公開してみてはどうだ?」
今の時代、交流だけならネットでも可能だ。細々とやっていくのもいいじゃないか。
「おお、いいな。それも検討してみる」
少し希望が湧いたようで、サトルは部へ向かった。
「ありがとうなリン」
「むふー」
リンもうれしそうだ。
「部活に行くか?」
「行く前に、コンビニでアイス買う」
「よし。好きなのを買ってやる」
「ありがと」
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