『もっと愛しあいましょ: 森田さんは無口。 OP』 チューは、恥ずかしかったんですわ!
「ホントホント」とリンはうなずく。優歌先輩の用意した重箱から、おにぎりとから揚げをつまみながら。
はやせは、信じられなかった。
今では、優歌先輩のご両親が作った重箱をつつくくらいには仲直りしている。安心していいだろう。
「二人がケンカって、珍しいですね。きっかけは、なんだったんですか?」
紙コップに人数分のお茶を用意しながら、はやせは事情を聞いた。
この歌に、モメる要素なんてあっただろうか?
「最初、私は『そっちがいいんじゃない?』って提案したの」
この曲を推薦したのは優歌先輩だという。
「でもね、唱子さんが『別のアニメでも使われている!』って」
「なるほど。わかります」
言われてみればそうだ。『もっと愛しあいましょ』は、『森田さんは無口。』の主題歌でもある。
「それも踏まえて、『なおさらこっちがいい』って主張したの。『最後のチューってとこ、カワイイじゃん!』って。みんなでやったら盛り上がるよーってさあ、私もゴリ押ししたのね。そしたら、口論になっちゃって」
傍から見ても仲がいい、良すぎるほどの二人が衝突するとは。
「珍しいものが見られた。あんなにプリプリして怒るしょーこを見たのは初めて」
自分もぜひとも目にしたかったものだと、はやせは思った。
「なにも、キレることなかったじゃないですか? クールビューティな唱子先輩らしくないですよ」
卵焼きを分けてもらいながら、はやせは意見する。
「……たんですわ」
ボソッと、唱子先輩がつぶやく。
「え?」
「チューは、恥ずかしかったんですわ!」
真っ赤になった顔を、唱子先輩は自分の手で覆った。
「優歌さん意外の人に『ちゅー』なんて、できるわけありません! はしたないですわ! こういうのは、大事に取っておかないと!」
イヤイヤをしながら、唱子先輩は言い訳をする。
その後、リンは借り物競走で「カワイイもの」を引き、はやせを連れてきた。
ギリギリセーフをもらったが、はやせは納得できない。なぜか盛り上がっていたのにも、居心地が悪かった。
体育祭の結果は、ラスト種目のクラス対抗リレーで大敗してビリに。
しかし、応援合戦でトップになった。
結果オーライと言ったところか。
「珍しいですね。二人がそこまでムキになるなんて」
「気心が知れてきたんですわ」
唱子先輩が、うんうんとうなずいている。
「そんなもんですかね。よくケンカするほど仲がいいといいますが」
「二人にも、いつかわかりますわ」
はやせとリンを言っているのだろうか、唱子先輩が思わせぶりな言葉を告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます