『LOVE2000:アニマエール! 挿入歌』 オリンピックイヤーだからね

 その後、リンにアニソンのいろはを教える日が続いた。


 気づけば、五月の体育祭を迎える。


 足の早いはやせは、体育祭でも重宝がられた。運動部ほどではないが、なんとか成績を残す。


「おい、運動部の二軍相手なら、敵なしだな」


 サトルに茶化されるが、はやせは首を振る。


「いや、昔に比べたら体力が落ちた」


 オタイベントで鍛えたフィジカルも、自粛ムードでちょっとガタ落ちしていた。自分でもわかる。


「そっか。オタイベントって割と体力勝負だもんな」

「現場から離れたら、こんなもんなんだな」


 応援合戦が始まる。紅組が男子ばかりで学ラン応援団、青組はストリートダンスで男女混合だった。

  緑組は、男女逆転の社交ダンスである。


「おーっ」


 黄色組の応援が始まった。


 チアガール姿の女子が、グラウンドに集結する。

 同じ組の全学年から、立候補してきた女子たち。

 その中に、リンも混じっている。

 みんなお揃いの黄色いチア姿だ。


「おっ、クロフォードさんだ!」


 サトルが盛り上がっていた。


「大島先輩も、高山先輩もいるじゃん!」


 大興奮状態のサトルに、肩をゆすられる。


「そうだな……」


 はやせも、思わず見とれてしまう。


 リンは応援団を率先してやりたがった。


 ポンポンを振って、リンが踊っている。


「おお、『LOVE2000』だ」


 しかも、『アニマエール!』版ではないか。




 応援ダンスが終わって、昼休みに。




「みなさん、お疲れさまでした」


 ビニールシートを囲んで、先輩二人をねぎらう。


 学校行事に消極的で、人前で踊ったりもしないと思っていたので、意外だった。


 やはり、リンの気持ちを汲んでのことだろう。


「お前もよくやったな、リン」


 はやせは、リンの頭も撫でる。


「はわあ」と、リンが聞いたこともない声を出す。


「あっ、スマン。つい」


 普段から猫っぽいので、思わずそれらしい対応をしてしまった。


「でも、えらいよ。よくがんばった」

「えへへ」


 リンの機嫌が治ったようで何よりだ。 


「先輩方、お疲れさまでした。やっぱ『LOVE2000』は、スポーツに合いますね」 

「オリンピックイヤーだからね」


 たしかに、オリンピックと言えば関連曲を流すに限るかも。


「無理やりねじ込みましたわ」


 振り付けまでアニメに合わせるとは。


「リンちゃんがやりたいけど心細いって言うから、混ざったの」

「体力には自信がありませんでしたが、喜んでくれたら何よりですわ」


 後半バテ気味だったが、唱子先輩はなんとか踊りきった。


「リンが二人を動かしたのか。すごいな」


 はやせはまた、リンの頭をなでそうになる。


 リンがはやせの手首を掴んだ。強引に頭を撫でさせる。


「あっ、『アニマエール!』といえば、『もっと愛しあいましょ』もありましたよね?」


 この楽曲を話題にした途端、唱子先輩と優歌先輩が苦笑いをした。


 リンが、「あー」と手を挙げる。


「しょーことゆーか、けんかした」

「エッ!?」

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