(29)暗闇の中で

「お兄ちゃん、どうしてるかな、、、」


鍵のかかった部屋の中、少女は呟いた。

ここに自分の兄が出入りしていたのは知っている。


どうやら、自分が捕まったことで、兄が言いなりにされているようだった。


何度か兄がこの扉を開けようとしてくれたが、ここの部屋にはかなり大昔の特殊な鍵が使われているらしく、鍵開けの得意な兄ですら開けることができなかった。


「どうすれば、、、」


最近ドア越しに聞いたのは、どうやらここの屋敷のお嬢さんが原因不明の病気で寝込んでいるということ。


ここの鍵は、ダナス議員の家系のものであり、その一族である者しか開け方を知らないということ。


–もう兄が自分のために利用されるのは嫌。お嬢さんが、善良な人であればここを出るのを手伝ってくれるかもしれない。


少女は兄の無事と自分の解放を祈った。



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