第58話 最高の夜

 ヤッホー、大阪からバイクで来たぜ‼九州にな‼実に10年ぶりだ。神戸から新門司には、フェリーで。バイクは良い。自由なフィーリングが得られる。九州に来たのは、憧れの作家さんに会うためだ。彼女は、博多に住んでいる。まだ、会ったことはないが、Twitterでやり取りしている。私は、プロフィールに顔面を晒しているので、会う時に分かりやすいだろう。私は、彼女の顔は知らない。


 土曜日の午後に会って、夕食を共にする予定になっている。私の目当ては海産物だ。この十年間、ほとんど肉は口にしていない。それは、ヴィーガンだったこともあるが、臭いが嫌で食べられなくなったことも理由。本当なら、安くあげて、屋台街でとんこつラーメンを食べて、スターバックスという手もけど、無理だ。もっとも、罪悪感を持ちつつウィンナーは、たまに食べているが…。


 しかし、彼女もよく俺と会う気になってくれたな。使い方は違うが、神様仏様だ。私は、今、46才で、独身。昔風に言えばオジンの部類だ。仕事はカメラマンをやっている。カメラマンは適職だ。何しろ学校でじっとして授業を受けるのが嫌で嫌でたまらなかったからね。とにかく、外に出るのが好きだった。それがこうじて、大学の時は、アルバイトをしては、カメラ片手に海外、特にインドに数回行ってたんだ。


 インドには、バラナシという都市がある。ここは、インド最大のヒンドゥー聖地なんだけど、ここにはまってしまった。毎年インド全土より100万人以上のヒンドゥー教徒達が、清めの沐浴と祈りの儀式のために訪れる。マニカルニカー・ガートと呼ばれる火葬場では、遺体を燃やして灰にし、それをガンジス河に流す。これが、ヒンドゥー教徒にとって最大の願いなんだ。彼女とは、そんな話をして、刺身を食べた。最高の夜だったぜ。

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