第57話 口は禍の元

 これは、私は、最初に勤めていた会社での出来事である。会社と言っても零細企業で、三役を合わせても30名に満たなかった。


 腹が立ったことがあった。ある日、先輩の本元さんが、ええとこ連れてったろと言うので、これは、風俗だなと思っていったら中古のエロ本屋だった。「よー、お世話になったわ」と言うのだが、今も、お世話になってるんちゃうんと思った。


 また、古田さんという先輩もそこに連れて行かれた。「本元さんにも、連れて来られましたよ。勘弁してくださいよ」と言うと「えへへへ」と彼は笑った。私は、本元さんに、酒をおごってもらった記憶がない。古田さんもそうだったと思う。


 話は、飛ぶが、村木さんという先輩がいた。彼は、私より年下なのだが、大学を現役で卒業し、会社に入社したため、二浪して入社した私の先輩になっているのだが、結婚して沖縄に新婚旅行に行った。


 そして、帰ってきて沖縄特産のお菓子が机の上に配られていた。私は、それを口に入れ、「ぐえー、何コレ‼」と言うと、横で仕事をしていた社長が「ああー」と言い、村木さんは、私の声を聞いて会議室から来た。そして、「うーん、ちょっと、不味かったかなあ、ごめん」と謝った。


 彼は、懐が大きかった。ただ、このお菓子をネットで検索しても出てこないのだが、二度目に食べた時は、滋養強壮に大変効果があると思った。口は、禍の元とはこの事か。

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