第56話 ブラザー&シスター

 これは、私がロサンゼルスのカレッジに留学していた時の話である。私は、日本で大学を出ていたので、普通なら大学院に進むべきだったのだが、カレッジに留学する前に働いていた会社で疲労困憊ひろうこんぱいしていたし、留学の目的は、正規の労働ビザを取る事だったので、最も簡単と思われるトラベル科を選択した。トラベル科では、旅行関係のアルバイトのビザが出る。当時ロサンゼルスは人手不足だったので引く手あまたであり、仕事には困らなかった。


 私は、当時日本人でお水をやっていた女の子と、お父さんが元海軍の白人の女の子に熱をあげていた。カレッジにはカフェがあり、そのスタッフに可愛い黒人の女の子が働いていた。彼女は私を見て、「あなたには、テスト前に私のノートを貸してあげていたよね」と言った。私は、「いや、借りてないよ。君は、勘違いしているんだ。俺に似ている奴がカレッジにいるからね」と、答えた。


 彼女は、私に好意を抱いていてくれたのである。それで、私にアプローチをかけてきてくれたのだが、その事に気が付かなかった。あの時、「彼とは似ているけど、私は、君のことが好きだ。電話番号を渡すから、良かったらかけてきて。食事や映画に行こう」と言うべきだったのである。ただ、私は、その時に黒人の女の子には、興味がなかった、というかハッキリ言って差別があった。そのことは、恥じている。


 日本人は、カラードである。私は、その後白人の女の子からのアプローチは一人受けただけだった。これは、私に魅力がないと言えば、それまでなのだが、やっぱりカラードは、カラード同志付き合うのが良いと思う。私は、その後、レストラン・バーで黒人のブルース・バンドにギターで飛び入りさせてもらうのだが、リーダーは、客からリクエストがあったストーンズのスタート・ミー・アップを弾かなかった。白人と黒人の間には、大きな溝があるが、黒人と日本人の間には、大した溝はない。黒人は懐が大きい。ただし、韓国人と黒人の間には、大きな溝があるのだが…。


 あと、もう少し言えば、アメリカ人の白人と結婚する日本人女性な。1945年のヒロシマ・ナガサキで何が起こったか、よく考えてみい。とても、結婚などという二文字は、出てこないはずだ。これが、チャーみたいに、嫁ハンがアメリカ人やったら話は別やけどな。

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