第54話 しっかりせえやエリカ

 私には、大学時代にエリカと言う恋人がいた。彼女とは、中学校の同窓会で再会して交際することになった。私は、大阪市立大学で経済学を学び、彼女も、バイオリストになるべく音楽大学で勉強をしていた。私たちは、私が家庭教師のお金で買ったジムニーの中古でちょいちょい会っていた。


 ある日、彼女の家に電話するとお母さんが出た。エリカさんいますか?と問うと「あ”あ”ぁ”ーっ(濁点の打ち方が分かりません。すいません)!〇✕△〇✕△〇✕△」と非常に不愉快な声を出して、聞き取れなかった。一体、何なんだ、アレはと思った。私は、一浪したが学歴ということであれば、申し分ないだろうと思った。


 ある夜、エリカは、会社のオフィス、住宅、居酒屋などが混在するエリアに行きたいと言った。そして、私たちは、そのエリアに行くと、私のお父さんは、ここでお好み焼き屋をやっているのと、自分に言い聞かせるように言った。私は、それなら、それでそのお好み屋さんに連れて行ってくれれば良いのにと思ったが、あえて突っ込まなかった。


 ある日、リエカがスパゲッティー屋さんに行きたいと言った。車で行って店に入り、スパゲッティーを食べた後、彼女はいきなり、見合いをすることになったと言う。寝耳に水であったが、私は、するならいいよ、と答えた。特に結婚しようとは、こちらも思っていなかったから。


 車の中で、なぜ、見合いをするようになったのかを、聞いた。すると、「分かっているくせに、分かっているくせに」と言って泣いた。私は、その時考えた。しかし、答えは出なかった。それにしても向こうのお母さんの対応が気になっていた。


 結論からして言えば、私が差別されていたのである。私の家は元々、中国の海賊で、400年前に日本に来ているが、改名しなかったので、名字が、誰がどう考えても中国人だと分かるようになっている。それで、向こうのお母さんの対応が悪かったわけだ。見合い云々もお母さんの差し金であろう。


 帰りの車中、彼女にボズ・スキャッグスのテープをエリカにあげた。すると、彼女は、「やさしいね」と言った。数年前、エリカとfacebookでつながった。なぜ、身を引いたかは聞かなかったが、あの頃は楽しかったよなと同意を求めると、いっぱい遊んだね、と言う。どのくらい付き合ってたんだろうと言うと、「付き合っていたかどうかは、曖昧かもー」、と答えた。何を言っとるんだ。50にもなって、何が「かもー」じゃ。しっかり、してくれや、まったく。

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