第51話 最後まで嫌な女
高校時代の同級生で理沙子という子がいた。彼女は美人だったのだが、性格が悪かった。私の中学時代の同級生で冴えない男友達、貫太郎が自転車で下校中、バスの中から「貫太郎さーん」と大声で手を振って、自転車をグラつかせる貫太郎を見て、「キャハハハハハ」と嘲り笑っていた。ただ、高校に入って、貫太郎はサッカーを始め勉学にも勤しみイケメンになり、女の子にモテ始めた。
時は流れて、貫太郎は市役所で働いていたが、適応障害を患うようになった。入院して会社を休職した。まだ、適応障害というメンヘラが市民権を得ていないころの話である。退院後は、体だけは鍛えようと考え、ジムに通っていた。そんな時ミクシィで高校時代の共通の友人を通して、貫太郎は、理沙子とつながった。旦那は、結核を患い、経済的に不安定なので理沙子は離婚していた。
理沙子は、帰国女子で塾の英語の教師を始めた。子供はいないので、なんとか生活はやっていけるらしい。貫太郎は、自分の近況を語った。適応障害で入院した事なども。そして、今部屋を片付けており、廃棄しようかどうか、迷っている本が何冊もあるから、いらないか?と理沙子に聞いた。そうすると、「私は、活字中毒だから、欲しい」と返答があった。
貫太郎は車のトランクに本を詰めて、待ち合わせ場所の回転すし屋のパーキングに持って行った。理沙子はバッグを持って待っていたが、ひどく老けていた。貫太郎は、こんな女にからかわれていたのかと情けなく思った。そして、本を渡してトランクを閉めて理沙子を見たとき、貫太郎の目に狂気を見たのか「ううん、私の家この辺だから」と自宅を特定されることを恐れた。あのね、あたしゃ確かに精神病ですよ。でも、アンタには何の興味も関心ももうないの、このクソアマが。そして、貫太郎は、車を再び走らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます