第50話 いい加減にしとけよ Ⅱ

  最初に働いていた会社に岡森君と言う一年後輩の社員がいた。時代は30年前なので、パソコンはなく、ワープロの時代だった。岡森君は、おとなしめの人だったが、仕事は、難なくこなしていた。その日もプレゼン用の資料を作っていた。


 職場には、女性のアルバイトの元ヤンキーの里見がいた。彼女は、一年間アメリカに留学していた。上司が、プレゼン用の資料に目を通すように指示を出すと、「あ、私は、英語はできるけど日本語は…」などと言い、上司を怒らせていた。


 ある日、岡森君が仕事をしていると、里見が来て、「岡森さん、眼も鼻も口の小さいから、チンチンもきっと小さいわ」と言った。岡森君は、空手初段だった。手がでるのを必死に堪えて、「里見、何言っているんだ」と詰問して里見のあとを追うと、里見は「キャー」と言って顔を赤らめて逃げて行った。


 里見は、本当に嫌な女だった。しかし、コレがまた、会社のエース級の植田君と電撃結婚してしまったのだ。植田君は何が良くて結婚したのかさっぱり分からない。里見は、背が低く、男のシンボルにチーンと打撃を加えるようなやつでもあり、これは実に痛かったのだが、まったく、あの女は何を考えているのだ。


 しかし、会社には、美人のアルバイトが二名入ってきた。それで、里見はだんだんと皆に無視されるようになっていた。植田君と里見との結婚は、破局を迎えているのかもしれない。いや、むしろ、そうであってほしい。そうじゃないと植田君が可哀そうだ。


 植田君が再就職した企業は、誰もが知っている一部上場のソフトウェア会社であり、女性は、よりどりみどりだろう。美里なんか捨てて、さっさと、次行ってほしいものだ。あれから30年経ったが、私は、里見の暴言にいまだに腹が立っているのである。



 

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