第30話 アメリカナイズド
私は、大学三年の春に、大阪空港で輸入カーゴの荷下ろしのバイトで稼いだ金で、アメリカを電車とバスで横断するのだが、とにかくアメリカに興味があった。これは、まず、高校一年の時に、Boz Scaggs《ボズ・スキャグス》の音楽にヒットしてから、洋楽に目覚め、ベストヒットUSAやMTVなども熱心に見るようになり、アメリカという国は、楽しそうだなあと思い始めたのが発端だ。また、オリビア・ニュートンジョンという美人シンガーに憧れたことも大きな要因だ。もっとも、彼女はオーストラリア人だが。
旅行記については、このカクヨムにある「アメリカ一人旅」に書いたので、興味がある人は、読んでください。横断して思ったのは、アメリカは、いまいち面白くないなだったが、大学を卒業して会社に入り、ストレスが高じ我慢できなくなり、またアメリカに行ってしまうのである。馬鹿だね。
私は、留学してコミュニティ・カレッジで、イラク戦争から帰還した元陸軍兵士と知り合いになるのだが、彼は、家にピストルを保管していたし、車も二台保有し、一台は予備としてあった。奥さんは、韓国人でMGMのカジノホテルでカクテルを運ぶサービスをしていた。奥さんとは、彼が韓国で英語教師をしていた時に知り合った。彼曰く、よりどりみどりだという事であった。
それは、良いのだが、彼は一部屋を日本人留学生に貸したいと私に依頼し、後輩を一人送り込んだ。その時にホームステイのルールが書かれた用紙があり、そこには、いかなるドラッグの所持も禁じており、発見次第、警察に通報すると書かれていた。私は、アメリカ横断のバスの中で、後部座席からマリファナの匂いがしたのをおぼえている。だから、マリファナくらいええんちゃうんと思うのだが、とにかく、徹底しているのであった。
私は、カレッジに通いながら、ツアーガイドをしてなんやかんやで五年弱、ラスベガスにいたので、かなりアメリカナイズドされているのではないか。危機管理。これも、そうであろう。私は、例えば、スターバックスでコーヒーをオーダーしに行く際に、椅子取りの為にテーブルに自分のカバンを置いて行くなど絶対にしない。
また、例えば、雨の日にうどん屋に入る際、外の傘立てに自分のものを刺して、帰りにパクられていたら嫌だなあと思ってしまう。日本では、心配性だと言われるが、私にとっては、そうではない。万が一のリスク。これを考えておかないとアメリカでは、やって行けないのが、身に沁みているのである。
個人主義というのは、自分は自分、他人は他人というものだと思うが、それは、私の中に大きくのしかかっている。他人を信用しない。これである。私は、躁鬱を抱えて、友人がみな去って行ってしまったこともあり、リアルでの友人は目下ゼロである。アメリカのミュージシャンの友人は何人かいるが…。
やはり、自国にゼロというのは由々しき問題ではないのだろうか。というか、大問題だ。同じ病気を抱えた友人、これがまた厄介で妄想を抱えている場合がある。付き合いきれないという事もある。そんなこんなで、先日カトリック教会に行って、神父と話した時に、あなたが教会に来る理由はと聞かれ、友人が欲しいと答えたが、あまり良い反応ではなく、もう行かないことにする。
駄目だね、俺は宗教にはどうも肌が合わない。あと、残るは音楽仲間だが、これも日本人ばかりの演奏にどうも違和感を感じる。私のドラムは、大した技量でもないのにね…。
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