第25話 オバはん、もっとマシな人間になれ!!
桜が満開の春に叔父が亡くなった。忍耐強く優しい叔父だった。彼が叔母とタイに駐在中、日本米を持ってきてくれと言われて届に行った。密輸だったのだが、税関はうまく通り抜けられて無事届ける事ができた。叔母は、最初の夜タイの伝統的なレストランを予約してくれていた。そこで彼らと食べたトム・ヤン・クンは、最高においしかった。それ以来、私はタイ料理の大ファンなのだが本題に戻る。
私の叔父は、阪神タイガースの大ファンだった。そして、焼き場に向かうバスの中で乗り合わせたのが、初めて会った親類の女性歯科医師のおばはんだった。彼女は、まず私にこう言った。
「こんなタイガースが最下位になった日に亡くなるとはねえ」
「ん?いや、でも、また盛り上げていけたらいいですよね」と、笑顔でこたえると 「そりゃ、ありまへんわ」と大きな声で嘲笑する。何なんだこのおばはんは!
そして、彼女は車窓の外を指さして、「あれは、武庫川?」と問う。彼女は、関西に住みながら、武庫川であることを知らなかった。歯科医でありながら、そんなことも知らないのかと、私が腕組をして「うーん」と唸っていると「何を考えているの?」と問う。
からかってやろうと思い「いや、さっきの川は、猪名川じゃないかと思って」と言うと、「いや、ちゃいますよ、私、池田ですもん!」と言って、またさらに大きな声で嘲笑する。嘲笑すること自体、自分の下劣な品性をあらわしていることが、このおばはんには分かっていない訳だが、猪名川ではないことは分かっているようだ。
すると、おばはんは、「じゃあ、私、これで調べてみましょうか」とスマホを取り出した。様子を見ていたのだが、結局、このおばはんは、スマホで何の川か検索できなかったのだ。こんなんで、歯医者やっていけんのか!
結局、焼き場から葬儀場に帰ってきて、食事をした際に、「こっちのスマホで調べたら、武庫川だった」と教えてやると、「ホラ、私が最初に言ったのが当たっていた!」と自慢げに言う。ええ加減にせえよ、歯医者かなんかしらんが、おばはん、少しは、まともな人間になれ!
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