第23話 失礼な従妹
これは、私がアメリカのコロラド州デンバーで留学して日本食レストランの配膳の仕事をやっていた時の話なのだが、パスポートの期限が迫ったので切り替えが行われるサンフランシスコの領事館まで、おんぼろ車を運転して行った。手続きをして、南下し、IT企業が集積したシリコンバレーへと向かった。この街の会社でいとこが働いていたからだ。
彼女はニューヨークで生まれ育ち、帰国後上智大学を出て銀行員になり、退職してアメリカに戻りスタンフォード大で経営学修士を取ってエリートになっていた。一方、私は貧乏でサンフランシスコでの宿代を浮かしたいので家に泊めてほしいと申し出た。オッケーだった。行くと、彼女は晩飯に中華を会社のアメリカ人の同僚のカップルと一緒に食べると言ってレストランに連れて行ってくれた。
しかし、席に着くと彼女は「これ、私のいとこ。でも、数回しか会ったことないから本当のいとことは言えない」と言い切った。何を言っているんだと、私は頭に血が上り、それを聞いたアメリカ人カップルも私の紅潮した顔を見て怪訝な顔になった。その時、思ったのは、彼女は私が100円のサンダルを履いてサンフランシスコに来たことを怒っていたのかなという事だ。しかし、シリコンバレーでは、アップルの創始者、スティーブ・ジョブズが、Tシャツ着てプレゼンしてたじゃないか、それに北カリフォルニアいうのは、もともとヒッピーの土壌があって裸足でもええくらいなんや。
しかし、その後の会食は楽しく行われ、話もはずんだ。旦那さんが、かつてネバダの核実験施設でエンジニアをやっていたという驚きの事実も判明した。食後、結局彼女の家に泊めてもらったが、就寝前、朝食にするから魚のフライをつくっても良いかと聞くと、また、オッケーだと言うので換気扇を回して料理した。すると、翌朝キッチンで魚の匂いがすると言って怒り出し、消臭スプレーをシューシューかけ始めた。じゃあ最初から、料理オッケーだなんて言うな。そんなに魚が嫌いか。いつから白人になったんじゃ。アジア人としての誇りを持て!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます