第17話 時を越えた宿怨

 2005年のお正月、私と弟はお宮参りに行くことにした。弟はオシャレが好きで、年収も結構あるのでいつも決めていた。一方、私は金が無いのでグレーのジャージのズボンと、弟にもらった黒のジャンパーを着ていたが、それなりに決まっていると思い外に出た。


ちょうど、幼馴染の武田守の家を過ぎるとき、帰省していた守の嫁はんの涼子が玄関の外にいて、私に向かって叫んだ。「何そのかっこう!一体、どこのおっさんが来たかと思ったよ!」と私をバカにしたのだ。そして、守なら今家にいるよと言ったが、私は頭にきて、無言で手を振って立ち去った。


4年後、彼らに年賀状を出すにあたって、あの嫁はんの言動を思い出した私は、連名ではなく、守の名前だけで出してやった。根に持つところが、私の良いところだ。人間こうでなくてはならない。


そして、7年後、守のお父さんが亡くなった。私が故人に供えるお花を持ち、遺体が安置されている武田家の玄関を開けると、そこには涼子がいた。「武田守の妻!涼子です!」と大声を出した。あのなあ、涼子よ。お前、時と場所を考えろや。もっと、大人になれ。


私はその時、改めて彼女の無神経さに呆れた。守の家族が悲しみの中にあるというのに、彼女の無頓着な態度には腹が立った。しかし、それもまた人間関係の一部なのだろう。時を越えても消えない宿怨、そして成長しない人間。そんな彼らとの関係は、私の人生においても一つの教訓となった。


その日、お宮参りで感じた違和感と苛立ちは、今もなお私の心に深く刻まれている。人間関係とは難しいものであり、時には距離を置くことが必要だと感じた出来事だった。

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