第16話 日中の狭間で

 実は、私の父方の先祖は中国系の海賊らしい。そして、江戸時代の初期に日本のおかに上がり、徳川家に仕えてのオランダ通詞として通訳と翻訳を長崎で行った。始祖は、江戸に向かう参勤交代で、摘発した長崎奉行所の汚職を徳川家に伝えると言って、他の者たちと口論になり、斬殺されている。


 オランダ通詞は一子相伝いっしそうでんだったので、代々名前が、引き継がれ、私の名字は誰が聞いても中国系だと分かるものになっている。しかし、仲の良い友人にでも、先祖が中国人ですかと聞かれたら、いや、長崎で江戸時代からオランダ通詞だったんだよ、でも、その前のことは分からないと答えている。


 初対面の人と、名前を交換する時には、相手は中国系だなと疑っている。その度に嫌な思いをする。だから、私はペンネームを使ってサバトラとした。本当ならリアルネームで書き物を公表したかったのだが…。でも、初対面の人には、これから先祖は、中国人で海賊ですわと、言ってやろうと思う。ファイザーを接種して、もし、数年後に副作用が出て死ぬのなら、もうどうでもいいからな。


 在日韓国人なら民団があってお互い支えあっているが、うちの場合、オランダ通詞として働いたために、現在、主に商売をやっている日本の華人の集まりとは全く縁がない。だから、孤立している。もっとも、華人の集まりに行っても躁うつ病を患った精神障害者なので輪には入られないのだが…。


 と、ここまでは、良いとしよう。問題は昨今の中国の動向だ。不動産バブルが弾ければ、かなりの痛手を食うと思うが、もし中国が台湾を取り、玉山ぎょくざん(旧名:新高山にいたかやま)にレーザーのようなものを設置して、稼働させれば日本の武力を無力化することができるらしい。


 今、この十年で、中国を嫌う日本人が多く出てきた。私は、名前からして一発で分かってしまうし、なおかつ精神障害者なので非常に肩身が狭い。だから、ダブルの差別がエスカレートしリンチにでも遭ったらという恐怖感がある。でも、そうなれば、戦うしかないのだが。それから、アメリカが日本を守るかどうかダウトだ。少子化、デフレ、金持ちのキャピタル・フライト、ヘッジ・ファンドの株の空売り。日本においしさを感じなければ、アメリカはさっさと引き上げるのではないか。私は、その可能性はあると思っている。

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