第14話 忘れられない夏
私は、躁うつ病で入院していた時、同じ病気で入院していた内科医に出会った。彼は私より10歳年上で、元左翼の活動家だった。彼は大学生の頃、何か重大な事件に関わり、警察に逮捕されたが、完全黙秘を貫いて無罪放免となった。しかし、その代償として大学から除籍された。
その後、彼は別の大学に入学し、今度は学生運動から距離を置き、アメリカン・フットボール部で体を鍛えるようになった。そして、内科医となったのだった。しかし、私と出会う一か月前、躁状態に陥り、警察に激烈な檄文を送り付けてしまった。
そこから彼の妄想が始まった。自宅の外に止まっている車が自分の電話を盗聴していると思い込み、その車を蹴飛ばしてしまったのだ。その結果、再び警察に逮捕され、措置入院となった。
彼と出会った時、彼は「ソチは措置ぞよ」と冗談を言っていた。その冗談には少し笑ってしまった。しかし、彼が医者という立場に対してスーパー・エリートであると考えていることには、少し違和感を感じた。私が二浪していたことを話すと、彼は「アホやなあ」と馬鹿にしたが、自分の病気を治せない医者も同じくらい馬鹿ではないかと、私は心の中で思った。
彼との会話は、私にとって忘れられない経験となった。彼の人生の波乱万丈な軌跡、そして病気と向き合う姿勢には、何かしらの教訓があったのかもしれない。病院の中で過ごしたその夏は、私の心に深く刻まれている。 私が、躁うつ病で入院していた時に、同じ病気で入院していた内科医がいた。
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