第13話 ざまあみろっちゅーんじゃ

 これは、私の最初の職場での出来事なのだが、私の3、4つ年上の体がデカいやつが入社してきた。こいつは、私たち年下の先輩に対して敬語が使えなかった。お父さんが会社をやっており、事業が成功していたこともあり、甘やかされて日本の大学を出てなおかつ、アメリカの大学院に留学させてもらい、帰国してニートをやっていたようだ。その間、本人曰く、原稿を書いていたと言っていたが、それを聞いていた私の一つ上の先輩と私は、は?何の原稿やねん?と呆れてものが言えなかった。


 私はカレーが好きで、テイクアウトして職場の会議室でみんなで食べていると、アメリカのバンド、イーグルスの話になった。すると、彼は代表曲ホテル・カリフォルニアのソロを聞いたら、自動的に手が動くのよーんと言って自慢する。アホか。あのソロは前半はともかく後半の三連、チャララ、チャララ、チャララは相当練習を重ねんと弾けんのじゃ。


 さらに、柳原和子著に「『在外』日本人」 という本があるのだが、「ああー、俺もこんな仕事したかったな」と言って、実に悔しそうな顔をする。ほんなら、書いたらええやないか。うちの会社は自主研究は奨励されてるんやから。そんな感じでイライラしながら接していたのだ、ある日私の使っていた和英の電子辞書がなくなっていた。どうも、こいつがシンガポールへの出張に持って行ったらしい。そして、帰ってくると私の机の上にポーンと置いてあった。借りるなら借りるで断り入れんかい。お前そんなこともできんのか。また、役所に出す見積書が私の机から消えたこともある。これも、コイツの仕業だと私は思っている。


 そんな中、こいつは牛革のバッグを買ってきた。社長には結構値段がはったと言っていた。私は、このころには牛が飼育されている過程がいかに悲惨であるかを知っておりベジタリアン化していたから、「まるでビニールみたいだ」と言ってやった。すると、こいつは私に「こんな事言われて、僕じゃなかったら怒ってるよ」と言った。実際、怒っている訳だが、私は当時合気道を稽古しており、鼻にもひっかけなかった。そして、その後、こいつがそのかばんを会社に持ってくることはなかった。ざまあみろっちゅーんじゃ。

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